GoogleはAIエージェントによる商取引を安全かつ透明性の高い形で実現するため、新しいオープンプロトコル「Agent Payments Protocol(AP2)」を発表した。AIがユーザーの代理で商品を購入する「エージェント型コマース」が注目を集めるなか、従来の決済モデルではカバーできない信頼性や責任の問題に対応する取り組みとなる。

Googleは、Adyen、American Express、Ant International、Etsy、Forter、Intuit、JCB、Mastercard、Mysten Labs、PayPal、Revolut、ServiceNow、UnionPay International、Worldpay、Salesforceを含む60社以上の企業と連携し、暗号資産を含む幅広いエコシステムとの相互運用を見据えている。
AP2は、ユーザーがエージェントにどの範囲まで購入を任せられるのかを明示的に示す「Intent Mandate」と、最終的な商品や価格を承認する「Cart Mandate」という二段階の委任構造を導入。「誰が意図し、どの条件で購入が行われたか」を暗号署名によって証明可能にする。改ざん不可能な形で記録が残るため、誤った取引や不正利用が発生した際にも、責任の所在が明確になる仕組みだ。
新たなコマース体験の実現
ユーザーがエージェントに購入条件を委任することで、これまでにない新しい商取引を可能にする。
- よりスマートなショッピング:顧客が、欲しい冬物ジャケットの特定の色が在庫切れであることに気づき、担当者に「このジャケットのグリーンがどうしても欲しいのですが、最大20%増しで購入可能です」と伝える。担当者は価格と在庫を監視し、条件を満たした瞬間に安全な購入手続きを自動的に実行。本来であれば見逃されていた購買機会を確実に取り込むことができる。
- パーソナライズされたオファー:買い物客が、特定の販売店で次の旅行に備えて新しい自転車が欲しいとエージェントに伝える。エージェントは旅行日程を含む情報を販売店に共有し、販売店側のエージェントは自転車、ヘルメット、トラベルラックを15%割引で提供する期間限定バンドルを作成。単純な問い合わせを、より価値の高い販売へとつなげる。
- 連携タスクの自動化:ユーザーが週末旅行を計画し、旅行代理店に「11月の最初の週末にパームスプリングスへの往復航空券とホテルを予約してほしい。予算は合計700ドル」と依頼する。旅行代理店は航空会社やホテル、さらにオンライン旅行プラットフォームと連携し、予算内の組み合わせを見つけると、暗号署名付きで両方の予約を同時に実行。ユーザーは手間をかけることなく、条件に合った旅行を実現できる。
ステーブルコイン・暗号資産決済の導入
AP2はユニバーサルプロトコルとして設計されており、クレジットカードや銀行振込など従来の決済に加え、ステーブルコインや暗号資産での支払いにも対応可能となる。
GoogleはCoinbase、Ethereum Foundation、MetaMaskなどの主要組織と連携し、Web3エコシステムへの対応を加速。エージェント主導の暗号通貨決済を実運用可能にする「A2A x402」拡張機能をリリースした。
ユースケースの例では、ステーブルコイン決済を利用すると、顧客がカード番号を入力せずにワンタップでUSDCを利用でき、小売業者が不正リスクを抑えつつ即時決済を実現できるシナリオが提示されている。
AP2は国際送金の効率化や手数料削減、そして地域や国境を跨ぐシームレスな取引を可能にする基盤として発展を続けている。
GoogleはAP2をオープンソースプロトコルとして公開し、開発者や決済事業者、標準化団体と連携しながら進化させていく方針を示している。AIエージェント認証や分散型IDといった周辺分野での技術革新を促し、ネットワーク、発行会社、加盟店、テクノロジープロバイダー、そしてエンドユーザーを巻き込む、新しいエコシステムの形成を目指す。
AIと決済の融合は新しい商取引モデルを生み出す可能性を秘めている。GoogleのAP2が業界標準として定着するのか、それとも技術実装と規制調整の間で模索が続くのか。今後の動向が注目される。
参照:公式