円連動型ステーブルコインの実用化が進むなかで、JPYCとメガバンク陣営の構想は一見似ているように見えますが、実際には発行の法的枠組みも、利用者の範囲も大きく異なります。
焦点となるのは、どちらも1円連動を目指すデジタルマネーでありながら、誰が、どの制度で発行し、誰が使えるのかという点です。
JPYCは、資金移動業者として発行するオープンな電子決済手段型ステーブルコインで、Web3やDeFiとの親和性を重視した設計です。
一方、3メガバンクが進める信託型ステーブルコインは、信託契約に基づく枠組みを採用し、ホワイトリスト方式によって利用者を限定する構想です。両者は同じ円連動型でも、制度設計と想定用途が根本から異なっています。
2025年の制度改正で広がった円建てステーブルコインの選択肢
背景にあるのが、2025年6月の資金決済法改正です。この制度改正を受けて、信託銀行を介したステーブルコイン発行が可能になり、日本国内でも円建てデジタル決済手段の制度上の選択肢が広がりました。

JPYC株式会社は2025年10月27日、日本円連動ステーブルコイン「JPYC」の発行を開始しました。
同社が資金移動業者として登録し、1JPYC=1円の電子決済手段としてEthereumやPolygon上で運用していると整理されています。
発行資金は信託銀行に預けられ、1対1で裏付けられる仕組みです。ウォレット経由で購入・送金できる点が特徴で、Web3エコシステムでの実用を前提とした設計といえます。
一方、3メガバンクは2025年11月7日、三菱UFJ信託銀行とProgmatを含む枠組みで、信託型ステーブルコイン発行に向けた共同実証を開始しました。参加するのは三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3行で、金融庁の支援対象にも採択されています。
ここで想定されているのは、銀行を共同委託者、信託銀行を受託者とする信託契約に基づく「特定信託受益権」であり、利用者はホワイトリストで管理される構想です。
主な用途としては、法人間決済やクロスボーダー取引が想定されています。
最大の違いは「オープンアクセス」か「ホワイトリスト限定」か
JPYCと3メガバンクの信託型ステーブルコインの違いを最もわかりやすく表すのが、アクセス制限の有無です。
JPYCは、資金決済法上の電子決済手段として、一定の手続きを経れば広く利用できるオープン型です。
個人ユーザーやWeb3事業者がウォレットベースで扱えることに意味があり、ブロックチェーン上の各種アプリケーションと接続しやすい点に強みがあります。Web3ネイティブな送金・決済のインフラとして使いやすい設計です。
これに対し、メガバンク陣営の信託型は、ホワイトリストに登録された利用者に限定される仕組みです。制度上の安定性やコンプライアンスを重視する構造であり、不特定多数が自由に保有・送金することを前提としたモデルではありません。
つまり、同じ「円連動型ステーブルコイン」であっても、JPYCが志向するオープンなWeb3利用を、そのままメガバンク型が置き換えるのは難しいということです。
競合ではなく、用途の異なる補完関係
JPYCと3メガバンクの信託型ステーブルコインは、単純な競合関係として捉えるより、役割の違う並立・補完関係として見るほうが実態に近いといえそうです。
JPYCは、個人やWeb3事業者も利用しやすいオープン型として、DeFiやオンチェーン決済など、柔軟なブロックチェーン活用に適しています。
一方、メガバンクの信託型は、法人間決済や国際送金といった、規制対応や信用力が重視される領域に向く設計です。
