米証券取引委員会(SEC)の取引・市場部門は4月13日、分散型金融(DeFi)のフロントエンドやセルフカストディ型ウォレットの画面提供者が一定条件を満たす場合、暗号資産証券の取引準備でブローカー・ディーラー(証券仲介業者)登録を求めないとするスタッフ声明を公表しました。株式や社債のトークン化まで視野に入れた整理で、DeFiの入り口部分を巡る長年のグレーゾーンに、具体的な運営基準が初めて示された形です。
対象になるのは「Covered User Interface Providers(対象UI提供者)」で、ウェブサイト、ブラウザー拡張、モバイルアプリなどのうち、ユーザー自身が秘密鍵を管理するセルフカストディ型ウォレットと組み合わさるサービスです。SECスタッフは、これらが全12項目の条件を満たすなら、1934年証券取引所法15条(a)(b)に基づく登録なしで運営しても異議を唱えないとしました。法令そのものを改めたわけではなく、委員会本体を拘束するルールでもありませんが、現場の運営基準としてはかなり具体的です。運用期間は5年で、委員会が別の対応を取らなければ2031年4月13日に撤回される予定です。
条件の中核にあるのは、UIが「勧誘しない」「預からない」「執行しない」という線引きです。利用者はスリッページ、ガス代、執行タイミングなどの初期設定を自分で変更できなければならず、UI提供者は教育資料を出せても、特定の暗号資産証券を勧めたり投資助言をしたりはできません。秘密鍵へのアクセスや資産保管、注文ルーティング、取引執行、決済にも関与できず、手数料は取引場所や相手方、銘柄に左右されない固定型であることが求められます。
開示義務も広く設けられました。対象UIは、未登録事業者であること、自社の役割、手数料、利益相反、関連会社の取引場所を使う場合の関係、サイバーセキュリティ方針、MEV(注文の並べ替えで生じる利益)への対応など、9項目の情報を目立つ形で表示する必要があります。関連する取引場所を初期設定に入れる場合は、第三者にも同じ条件を適用し、その関係も開示しなければなりません。SECは、ユーザーが自ら条件を決め、UI提供者が推薦や執行に関わらない仕組みであることを重視しました。
今回の整理が注目されるのは、対象に「crypto asset securities(暗号資産証券)」としてトークン化株式やトークン化社債も含まれるためです。RWAをDeFiに接続する入口が仲介業登録への不安を抱えたままだと、サービス提供側の負担が重く、開発や公開をためらう要因になってきました。声明は2025年8月にDeFi Education Fundが提出した提案にも言及しており、SECのクリプト・タスクフォースが進める制度整理の一環です。
ユニスワップはブラウザー経由で取引画面を提供し、メタマスクはユーザーが秘密鍵を保持したまま利用できるウォレットと交換UIを組み合わせています。今回の枠組みは、こうした既存の大手フロントエンドが今後トークン化株式やトークン化社債の取り扱いに広がる際の前提条件にもなります。
次にSEC本体が問われるのは、この整理を正式なルール提案まで進めるかどうかです。今回のスタッフ見解は5年枠で運用され、区切りとなるのは2031年4月13日になります。
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