SyFuのホワイトペーパー2.0が公開された。公式AMA配信でファウンダーの神谷氏が語ったのは、「消費×GameFiがどう経済を変えるのか」という壮大なテーマだった。
GameFiとしての仕組み、DePINとしての基盤、そしてウォレットとしての体験。一見バラバラに見える要素が、なぜ一つの構想に集約されているのか。
そこで語られたのは「How(仕組み)」の先にある「Why(なぜ)」だ。プロジェクトの全貌をつなぐ核心が公式AMAで明らかにされた。
*なお、本記事は配信内容をもとに文字起こし・再構成したものです。解釈の違いや内容の誤りが含まれる可能性がある点、あらかじめご了承ください。詳細は公式AMAあるいはホワイトペーパーをご覧ください。
SyFuが決済データを可視化する意味とは?
まず、SyFuが見ている社会課題は「消費」と「経済」の断絶だ。日々の購買が経済に与える影響は巨大なのに、その貢献を個人が実感する場がない。
パンデミック期は、その断絶を象徴するきっかけとなる。
「2020年の緊急事態宣言で、たった2か月、外に出るなと言われただけで、世界のGDPが3.4%も落ちたんです。 2ヶ月で3.4%はとんでもない数字で、いかに日常の消費が経済にとって重要な影響を及ぼしているのかを、世の中が再確認した。一方で、その消費がどう貢献しているのかを実感する機会は、ほぼない。」
消費は経済のエンジンだが、当事者が貢献している手応えを得られていない。ここを「体験」で埋めにいく。
「今まで評価されてきたのは資産や年収。『この人は年収いくらだから信用できる』『資産をこれだけ持っているから信用がある』という形でした。
でも“年間でいくら消費したか”という実績は、まったく可視化も評価もされてこなかった。」
実際、この一年で自分がどれだけ消費をしたかを証明できるモノはない。経済に最も直接的に貢献しているはずの消費が、数値として評価されない。これは国や地域を問わない、世界共通の課題だ。
ではなぜ、これまで消費の実績が捉えられなかったのか。背景には現金決済の多さがある。
「コロナ前までは50%以上が現金決済でした。日本も30〜40%程度しかキャッシュレス化が進んでいなかった。」
しかし、コロナ禍を経て状況は一変した。
「今はキャッシュレスができない店を探す方が難しい。ヨーロッパでは現金を持つ必要がほぼなく、ほとんどがタッチ決済で済む。」
キャッシュレスの変化によって、消費の実績を裏付けるエビデンスとして決済データが利用可能になった。
そして、もう一つの壁がある。現在の信用データは国境を超えられない。
「銀行での融資や住宅・賃貸契約など、日本では信用が蓄積されます。でもそれはドメスティックで中央集権的。国をまたぐと信用データはリセットされる。」
その結果、日本に住む外国人は信用データがゼロの状態からスタートせざるを得ず、逆に日本人が海外に出ても同じことが起きる。
「これがグローバルな個人信用インフラが存在しないことの根本的な課題です。」
とはいえ、価値を持つはずの決済データは、全部がカード会社のサーバーに眠ったままだ。ユーザー自身が活用できる場はほとんどなく、経済貢献の証明に結びついていない。
そこでSyFuは、「決済データの可視化」に挑む。
「決済データはユーザー側の価値としては使われていない。 僕らはWeb3のテクノロジーでこの埋もれた価値を解放して、消費実績を可視化します。」
ここでいう可視化は単なるダッシュボードの表示ではない。「信用の証」として機能するデータに変換し、社会全体で活用できる仕組みにすることこそが、本当のゴールである。
さらにSyFuは、この仕組みにGameFiの楽しさを組み込む。
ゲームを遊ぶモチベーションと同じ感覚で、日常の消費データが自然と蓄積されていく導線をデザインしている。
「ゲームを楽しめば楽しむほど、決済データに基づく消費の実績として積み上がる。それを分散型ネットワーク上で“ユニバーサルクレデンシャル”(グローバルで使用できる信用の証)にするんです。」
「これは国境を超えて使える個人の信用。オンチェーンでウォレットで常に持ち歩けるものになる。そんな世界を実現しようとしています。」
ここまで聞くと、金融インフラの話にも見えるが、同時に新しい消費体験の設計でもある。
お金を使った後に価値が積み上がる感覚と、それ自体が楽しい体験になる感覚を生み出す。そこにSyFuの設計思想がある。
消費の楽しさをGameFiで動機づける“育成ゲーム”に
SyFuが掲げる消費体験のゲーム化について迫る。
「ユーザーの消費体験をゲーム化しました。消費への新しいモチベーションをつくって、DePINエコシステムを育てるためです。」
育成ゲームで消費の楽しさを動機づける。
「クレジットカードを一度つないでおけば、日々の決済データが自動でアプリに入ってくる。そのデータを使って、招き猫NFTを育成し、トークンやNFTを獲得できる、新しい育成型GameFiです。」
「ゲームを楽しめば楽しむほど、決済データに基づく消費の実績が貯まって、それがDePINのネットワーク上でウォレットに保有できるようになります。」
つまり、遊んで育てた招き猫の裏には、ユーザー自身の経済貢献データがオンチェーン上に積み重なっていく。
体験が変化するのはユーザー側だけではない。
企業サイドにとっても、この仕組みは大きな転換になる。
「今のマーケティングは年収や職業を見て『この人はお金を使いそうだ』と推測しています。
でも、本人が年間いくら使ったかを証明できれば、企業が自然に『こういう優待を用意するので来てください』とオファーをかけられるみたいな。」
「個人を特定しないまま消費レンジを証明できるので、企業は適切なオファーを出せる。これがボーダレスに回る世界を目指しています。」
属性ベースの推測に頼ってたものから、実際の消費データに基づく最適なアプローチ。ここにデータ可視化の意義がある。
「GameFiやNFTはあくまで手段。最終ゴールは、皆さんの消費実績をオンチェーン上の信用証明にすることです。」
そのゴールが実現したとき、見えてくるのは国境のない信用インフラ。
「このデータネットワークは、企業の課題解決にもつながりますし、国に依存せず、世界中の企業と事業者が世界中のユーザーにアクセスできる。これをつなぐのが、SyFuプロジェクトのビジョンです。」
そもそも、なぜGameFiが必要なのか?行動変容を生む“ゲームの力”
ここで疑問が浮かぶ。なんでGameFiが必要なのか?
「ゲームのモチベーション、ゲームの楽しさ。ここに消費が連動しているプロダクトにはものすごく大きな可能性があります。」
着想の原体験はSTEPNにあるという。
「STEPNを1年半以上、もう2年近く研究してきました。実際にユーザーとしても使っていて、“歩く”という行動が楽しくなる、という価値を提供してくれた。」
本来は「移動のために仕方なく歩く」だけだった行為が、ゲームの仕組みによって変わる。
「バスに乗っていた距離をあえて歩くようになったり、歩くのが面倒から歩きたいに変わったり。こうした行動変容が起きるのが、GameFiの持つすごい力なんです。」
その力を、既存の事例に重ね合わせる。
「ポケモンGOやドラクエウォークも同じ。ゲームの要素があるから、人はその場所に行く理由を持つんです。」
さらにWeb3の要素が加わることで、影響力は一層強まる。
「NFTやトークンが絡むと、売買できる・利益が出る・損するかもしれないといった金融の仕組みが入る。この感覚が人の行動や消費、生活習慣と結びつくのは、とてつもないパワーを持ちます。」
だからこそ、消費のゲーミフィケーションはSyFuの肝となる。
「僕らがGameFiを持ち込んだ理由は、日常の消費をゲーミフィケーション化して、Web3テクノロジーで最大インパクトを与えるためです。世界のGDPがコンマ0.1でも0.01でも上がるようなプロダクトを実現したい。」
ゲーミフィケーションが消費を動機づけ、積み上がった消費体験は「信用の証」に変わり、そのデータ自体が資産として循環する。
「消費体験がアップグレードされて、それがクレデンシャル(信用証明)になる。ゲームの価値がデータの価値に、そしてデータの価値がデジタル資産に変わる。このサイクルをつくる。」
「わかりやすく言うと、月10万円使っていた人が楽しくて11〜12万円になる。」
明細を見るのが楽しみになるという体験は、これまでの消費活動を根底から変える可能性を秘めている。
オンチェーンだからこそグローバルに届く
「もしこれをサーバー型のWeb2サービスでやっていたら、せいぜい日本の中だけのデータにしかなりません。大した価値は生まれない。」
データをWeb2型で扱うことの限界を指摘し、オンチェーンで実現する意味を語った。
「世界の人が国境を越えて動く時代だからこそ、信用データもボーダレスに使える必要がある。」
日本だけを見ても、年間3,000万人以上の外国人が訪れるが、日本国内で信用データがゼロの状態から始めざるを得ない。逆に日本人が海外に行けば、同じ問題に直面する。
消費実績を国境に縛られない『共通の証明』に変える。その先に、真にグローバルなデータインフラが広がる。
では、どうやってその仕組みを実現するのか。鍵を握るのは「決済データの取り込み」。
まずは日本から着手し、『マネーフォワード』との提携。
「マネーフォワードさんと提携して、日本のクレジットカードの95%以上は自動でアプリに取り込める仕組みを作っています。マネーフォワードIDを作れば、そこに紐づいたカードデータをAPI経由で取り込める。」
そして次のステージがグローバル。
その挑戦を後押しするのが、欧州のオープンバンキング Salt Edge との提携。
「API連携だけではなく、提携契約も結んでいます。5000以上の規模の銀行とつながり、これがメインネット公開に不可欠な突破口になりました。」
これまで日本以外ではカード明細をレシートのようにアップロードして、取り込む必要があった。しかしレシートには偽造リスクがあり、限界があった。
「改ざんできないVisa・Master・Amexなどの国際ブランド由来のデータを重視している。正確性が高くて信憑性が当然高いデータというのは、それ自体が価値を持ちます。
だからこそ、決済データの自動取り込みにとにかく重きを置き、整備を進めています。」
将来的にはカード発行も視野に入れる。
「最終的にはSyFu自身がグローバルでカードを発行できるようにします。世界中どこでも作れるカードにして、使えばそのまま決済データが取り込まれる。
そしてGameFiのロイヤリティプログラムを提供するつもりです。」
ゲームの先にあるもう一つの構想「SyFuカード」
SyFuは、安定的にプロジェクトを続けるために、収益構造は二階建てで設計されている。
「短期的な収益っていうのは、どうしても短期的にぶっ飛ぶという法則があるんですよ。だから僕らは短期と中長期、両方の収益モデルを用意することが必要不可欠だと考えています。」
Web3では「トークンや取引手数料などのオンチェーンだけでトレジャリーを作る」というパターンが多い。だが、それだけに依存するのは危ういと強調する。
「ゲームだけで半永続的に収益を回すのは正直難しい。」
そのため短期では、GameFiのところで、NFT販売や二次流通手数料、ゲーム内でのトークン利用といった「地に足のついた収益」を積み上げる。
そしてGameFiを通じてコミュニティを広げながら、中長期的には新たな収益基盤へとつなげていく戦略だ。
それが「SyFuカード」。
「SyFuを本気で楽しんでいる人ほど『このカードを作った方が得だよね』と思えるクレジットカードを発行すること。」
カードを使えば決済手数料の一部がSyFuに還元され、利用者が増えれば増えるほどプロジェクト全体の収益も拡大する。
「つまり、ユーザーがゲームを楽しんで消費すればするほど、運営側の収益も自然に上がっていく。」
このモデルを「楽天カード」に重ねて説明する。
「カード会社が一番苦労するのは、カードを作る人をいかに獲得するか。還元率や優待は横並びだから、本来は大差がないんです。
たとえば、楽天で買い物をする人にとっては、楽天カードを作るのが一番お得。それは他のクレジットカードとの比較検討じゃなく自然な選択になる。」
同じことをSyFuでも実現するという。
「SyFuを日常的に楽しんでいる人ほど、SyFuカードを持つのが自然になる。ヘビーユーザーほど持った方が得になるから。」
GameFiはカード発行への動機づけとなり、同時にもう一つの収益基盤へもつながっていく。ゲームを入口にして、コミュニティやエコシステムを拡大することで、新たな収益基盤を中長期で築こうとしている。
秘密鍵のストレスをなくす「SyFuウォレット」の革新
SyFuがもう一つ重視するのが、日常使いのウォレット体験だ。
Web3の世界において避けて通れない課題が秘密鍵の管理。
「資産は自分で管理する、つまりノンカストディアルが大前提です。でも『秘密鍵を1個なくしたら終わり』っていうルールは、ユーザーにとってものすごいストレスなんですよ。矛盾だと思ってきました。」
そこでSyFuが採用するのが、秘密鍵を分散管理するMPCウォレット。
「秘密鍵を3つに分けて、そのうち2つを組み合わせれば復元できる仕組みです。バックアップを取ったら家に眠らせておいて構わない。あとは電話番号認証やパスキー、端末認証で使える。普段の利用におけるウォレットのストレスを極力なくしています。」
さらに、フィッシングや秘密鍵流出のストレスも軽減。ユーザーが安心してDeFi機能に触れられる環境を整えていく。
「このウォレットの中に、今後はステーキングやDEX、レンディングなどDeFiのサービスを組み込んでいく予定です。“ウォレット+ファイナンス”をセットで提供していくんです。」
ウォレットに蓄積されるデータは、ユーザー自身の資産であると同時に、企業にとっても新しい接点となる。
「消費実績が高いユーザーを、SBT(ソウルバウンドトークン)やDID(分散型ID)の技術で、実際の数字は見れないけれど証明できる。」
企業側は「年間でこれだけ消費する層にリーチしたい」と考え、そのアクセスフィーはエコシステムに流入する。
つまり、ユーザーが楽しみながら貯めたデータは、企業にとっても価値ある情報に変わり、その対価がエコシステムを潤す。そして循環の果てに、再びユーザーに還元されるのだ。
「ゲームを楽しむ → 決済データが貯まる → DePINの価値が上がる → 企業が費用を払ってアクセスする → エコシステムの資産価値に変わる → 最終的にユーザーに還元される。この循環がSyFuの理想です。」
SyFuの具体的なゲーム性について
ここからは具体的なゲーム要素についての要点をまとめています。ぜひ、参考にしてみてください。
また、ゲームの詳細はこちらで解説しています。
Genesis NFTについて:固定供給された最も希少なNFT
SyFuのNFTエコシステムの中心にあるのが、Genesis NFT。
発行数は3,120体のみで、ゲーム内で増えることはなく、エコシステムの根幹を支える存在と位置づけられている。
初期ミントは2024年2〜3月ごろ、コミュニティがまだ数百人規模だった時期に行われた。現在はElement(エレメント)で取引可能だが、供給が増えない点が他のNFTと異なる。
ゲーム用NFTについて:招き猫の育成とレアリティ
ゲーム内で実際に利用されるのは、招き猫をモチーフにしたNFT。レアリティはCommon / Uncommon / Rare / Epicの4段階。Epicはリリース初期には存在せず、ゲームの進行に伴い登場する仕組みになっている。
初期セールではUncommonが販売され、約5,500体が流通。その後、KDDIとのコラボで300体、1Blockとのコラボで500体が追加され、総計で6,300体規模となった。Element(エレメント)で取引可能。
Commonは2024年3月に行われたセールで登場。総数22,222体のうち2万体が販売され、価格は50ドル固定。公式マーケットプレイスのみで売買でき、50ドル未満・超の取引は不可というユニークなステーブル型NFTだ。ビギナー向けの入門編という位置づけである。
一方、ブリード(掛け合わせによる新規生成)はUncommon以上から可能で、Rareを生み出すロジックも組み込まれている。
これから始める人へ:NFTの獲得方法
これから参加する人にとって、NFT入手の方法。
Uncommonを入手する方法は二つ。今は既存のUncommonを「Element」で購入することができる。メインネット公開後には、ブリードによって生まれたUncommonをマーケットで購入することも可能になる。
Commonであればいつでも50ドルで購入可能。公式マーケットプレイスが公開されれば、固定価格で手に入れることができる。
そのほか、不定期に行われる「コラボNFTセール」に参加し、購入できれば獲得することもできる。
最後に、「Web3こそコミュニティ」
SyFuが大事にするのは、「Web3はコミュニティ」と強調する。ユーザーであり、投資家であり、サポーターであり、共感者でもあるコミュニティが、エコシステムの持続性を支える。
「僕らは透明性を持って、日々改善し、必要な機能は足し、不要な機能はやめる。良いことも悪いことも共有して前に進む。」この姿勢が、コミュニティと共に歩むSyFuのスタイルだ。
SyFuのコミュニティの熱量は、すでに実績として現れている。テスト版だけで月3〜4億円規模の決済データが取り込まれている。テストネット上ではトークンもNFTも価値を持たないにもかかわらず、ここまでのデータが集まったこと自体が、コミュニティの熱量を示している。
ユーザー数は約1万人、そのうちMAUは50%(約5,000人)。マーケティングはエアドロッププログラム程度にとどまっているが、それでもこれだけの利用がある。今後はメインネット公開に合わせて段階的にアクセスを拡大し、さらに加速していく構えだ。
SyFuの構想は壮大だが、筋は明快だ。
日常の消費に“価値が積み上がる”体験を重ね、そのデータをグローバルな信用の基盤へ変えていく。
コミュニティと共に「世界のGDPにヒットする」規模感を見据える姿勢が浮かび上がった。
SyFuに少しでも関心を持った方は、ぜひ今後の展開をチェックしてみてください。