Yuga Labsが人気NFTコレクション「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」の模倣NFTをめぐって起こしていた訴訟が、4年越しで和解に至りました。2026年4月7日付で米連邦裁判所に和解到達が通知され、被告側によるYuga Labsの画像や商標の使用を恒久的に禁じる差し止め命令が盛り込まれる見通しです。NFTが商標法上の保護対象になる先例ができたことも注目されます。
米連邦裁判所の記録によれば、Yuga Labsは2022年6月、Ryder Ripps氏とJeremy Cahen氏をカリフォルニア中央地区連邦地裁に提訴しました。争点となったのは「RR/BAYC」と呼ばれるNFTコレクションで、BAYCの画像を反転・加工した1万点が販売され、報道ベースで約160万ドルを売り上げたとされています。Yuga Labsはこれを商標侵害、虚偽表示、サイバースクワッティングに当たると主張し、購入者に混乱を招いたと訴えていました。
地裁は2023年4月、Yuga Labs側に有利な判断を下し、Ripps氏とCahen氏に約880万ドルの損害賠償と弁護士費用の支払いを命じました。もっとも、この判断はそのまま確定しませんでした。第9巡回区控訴裁判所は2025年7月、消費者の混乱を十分に立証していないとして地裁判決を取り消し、審理を差し戻しました。
控訴審は同時に、より広い法的意義を示しました。判決文はNFTを商標法の対象となる「商品」と認定しました。NFTがデジタル上の記録だけではなく、商標権侵害の是非を判断する対象になることを示したことで、NFTプロジェクト側が模倣品対策を進める際の法的根拠が強まりました。
今回の和解は控訴審の判断を踏まえ、再審理に進まず全面解決を選んだとみられます。裁判所への通知には、Ripps氏とCahen氏は今後、Yuga Labsの商標やBAYC関連画像を使用できなくなると記されています。
この訴訟は、NFTの知的財産保護をめぐる代表例として、Hermèsの「MetaBirkins」訴訟と並んで参照されてきました。MetaBirkins事件でも、高級ブランドの商標に類するNFT作品に既存の商標法を適用する問題が問われました。Yuga Labsの件では、控訴審がNFTを「商品」と認めたことで、NFTコレクションの運営企業や権利保有者が模倣NFTやブランド便乗型コレクションに対応する方針を定めやすくなったとみられます。
BAYCは2021年以降のNFTブームを象徴するコレクションとして知られ、知名度の高さから模倣や便乗の対象になってきました。今回の和解は一件の紛争の終結にとどまらず、NFTを巡る消費者保護とブランド保護の線引きを裁判実務の中で積み上げた事例になっています。
裁判所では和解に伴う正式な差し止め命令の手続きが進む見込みです。
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