リップルは4月20日、公式ブログでXRPレジャー(XRPL)を遅くとも2028年までに量子耐性へ移す4段階のロードマップを公表しました。グーグル・クオンタムAIが、暗号資産の署名で広く使われる256ビット楕円曲線暗号を破るために必要な量子計算資源は従来の見積もりより大幅に少なくて済むと報告を受けて、長期保有口座やトークン化資産を抱えるネットワークも備えを急ぐ局面に入っています。
グーグル・クオンタムAIは3月末、256ビット楕円曲線暗号の解読に必要な規模を「50万未満の物理量子ビット」と見積もり、論理量子ビットでは1200〜1450程度としました。従来推計の約20分の1に縮んだ計算で、同社は暗号資産業界に量子耐性暗号への移行を促し、自社でも2029年までの移行計画を掲げています。リップルはこの分析を受け、「脅威は理論上の話から、現実に備えるべき段階に移った」と記し、公開鍵がオンチェーンに現れるアカウントでは、今は使われなくても将来解読する前提でデータを集める「ハーベスト・ナウ、ディクリプト・レイター」への備えが必要だと説明しました。
ロードマップは4段階です。最初の段階ではQ-Day(既存の公開鍵暗号が量子計算機で破られる日)を想定した緊急移行手順を整えます。量子耐性のゼロ知識証明を使い、既存アカウントの所有権を証明した上で、新しい量子耐性アカウントへ移す方法を検討します。もっとも、リップルは現時点で資産に差し迫った危険があるわけではないとも書いています。
2026年上半期に始まる第2段階では、米国立標準技術研究所(NIST)が推奨する耐量子署名方式を試し、ML-DSA(NIST推奨の耐量子署名方式)も候補に入れます。プロジェクト・イレブンとは、ハイブリッド署名の概念実証、バリデーター(取引検証ノード)向けテスト、Devnet(開発者向け検証ネットワーク)でのベンチマーク、ポスト量子カストディーウォレットの試作で組みます。社内ではムラト・センク博士、タマシュ・ヴィセグラディ博士、オレグ・ブルンドゥコフ博士、アーンチャル・マルホトラ博士らの応用暗号チームが参加し、デニス・アンジェル氏はAlphaNet(初期検証ネットワーク)でML-DSAの先行実装を担います。
2026年後半の第3段階では、候補となる量子耐性署名を既存の楕円曲線署名と並行してDevnetに載せ、性能、ストレージ、帯域への影響を詰めます。検証対象には量子耐性のゼロ知識証明に加え、準同型暗号も入り、MPT(Multi-Purpose Tokens、多目的トークン)向けのConfidential Transfers(秘匿送金)など、トークン化領域のプライバシー保護とコンプライアンス強化も視野に入ります。
2028年を目標とする第4段階では、新たなアメンドメント(プロトコル改定提案)を通じてXRPLにネイティブな量子耐性署名を組み込み、バリデーターやウォレットを含むエコシステム全体を切り替えます。リップルは全面移行を「遅くとも2028年まで」に終える方針を掲げました。こうした工程を引きやすい理由として、XRPLがネイティブのキー回転機能を備え、アカウントを変えずに鍵だけを更新できる点を挙げています。シードベースの鍵生成も新しい鍵への切り替えを後押しし、イーサリアムのように同等の仕組みを標準で持たないチェーンより、利用者の移行負担を抑えやすいとみられます。リップルはこの作業について「XRPL at scale」で機能する方式を見極めると記しました。
次の節目は2026年上半期のアルゴリズム試験と、同後半に予定するDevnetでの並行運用です。ここで得る性能データを踏まえ、新アメンドメントの設計とネットワーク全体の移行手順が具体化していきます。
参照:公式