米上院のシンシア・ルミス議員が2026年7月22日に公表したClarity Actの616ページ更新草案に、公職者の暗号資産事業を制限する倫理規定が盛り込まれました。大統領を含む公職者や公務員、その配偶者による有償のデジタル資産発行・スポンサー活動を制限する一方、発行禁止規定は2029年1月20日正午に失効します。倫理規定は上院採決に向けた最大の争点とみられており、今回の更新で法案成立への最後の障害を取り除けるかが焦点です。

今回の文書はH.R. 3633を差し替えるための更新草案で、成立済みの法律ではありません。クラリティ法案は、暗号資産を証券とデジタル商品に分けてSECとCFTCの管轄を整理する市場構造法案ですが、トランプ氏と家族の暗号資産事業をめぐる利益相反への対応が超党派合意の障害になってきました。Division Cとして追加された倫理規定は、この対立を解消するための妥協案という位置づけです。
Sec. 30101の対象は、公職者・公務員とその配偶者です。在任中、対価を受けて特定のデジタル資産を発行したり、資金提供や公の推奨、氏名・肖像の使用許諾を通じてスポンサーになったりすることを禁じます。大統領も対象に含まれるため、成立すればトランプ氏自身による新たな暗号資産の有償発行やスポンサー活動は制限されます。ただし、暗号資産を一般的な投資として保有・売買することまでは禁止されません。
適用範囲には大きな例外もあります。公職者の子どもは対象に含まれず、本人が直接発行・支援しない形で家族や関係企業が事業を展開する余地が残ります。また、就任前から公職者の氏名や肖像を使っていた発行体は、本人が直接持分を売却するか適格なブラインドトラストへ移した後も、一定の条件下で追加発行や販売を続けられます。このため、トランプ氏の既存のミームコインや家族関連事業が全面的に停止する規定ではありません。
執行方法も今後の議論の的です。違反への法的措置は米司法省が担い、州司法長官や民間の当事者による独自の執行は認めない設計とされています。民主党側からは、政権の司法省だけに執行を委ねれば、現職大統領に対して規定が実効的に機能しないとの批判が出ています。
さらにSec. 30105は、発行・スポンサー禁止を定めるSec. 30101と同条による改正を2029年1月20日正午に失効させます。失効後は、失効前の行為についてもSec. 30101に基づく罰金、没収、その他の責任を問えない設計です。この日時は現在の大統領任期が終了する時刻と重なるため、規定が利益相反を長期的に防ぐ仕組みなのか、現政権中だけの政治的な妥協なのかが問われます。
更新草案にはこのほか、ステーブルコインを保有するだけで得られる利息・利回りの制限、自己管理ウォレットを利用する権利の保護、暗号資産事業者の破産時に関連資産やデジタル商品を顧客財産として扱う規定も含まれます。ただし、ステーブルコイン利回り規制は前版から大きく変わっておらず、今回の更新で最もニュース性が高い変更は倫理規定の追加です。
次の焦点は、倫理規定が民主党議員の支持を得て、法案が上院本会議の審議・採決へ進めるかです。公職者の子どもや既存事業が対象外となる範囲、司法省に集中した執行体制、2029年の失効後に過去の違反責任まで問えなくなる点は、今後の修正協議で争点になりそうです。
参照:公式草案

