BISは、米ドル連動型ステーブルコインが資本規制や為替制限をかいくぐり、新興国で米ドルの利用を広げる可能性があると警鐘を鳴らしました。銀行預金を前提にした従来の資金移動管理では、暗号資産ベースのドル流動性を十分に捉えにくいことが、今回の分析で浮き彫りになっています。

BISのワーキングペーパー第1370号「Dollarisation and monetary control: what lessons for the rise of stablecoins?」は、130以上の経済圏を対象に、ステーブルコインのフローが幅広い資本フロー制限にも個別の制限にもほとんど影響を受けていないと整理しました。研究を担ったボリス・ホフマン氏、アーロン・メロトラ氏、ヤン・パウリック氏は、ステーブルコインが規制の枠外でも流通するため、外貨銀行預金に比べて為替制限や資本規制が効きにくいと指摘しています。
資本規制や為替制限は、政府が自国からの資金流出や外貨需要の急増を抑えるための手段です。米ドル連動型ステーブルコインは銀行口座を通じた外貨預金とは異なり、暗号資産取引所やウォレットを通じて保有・移転されます。この構造が、利用者に銀行システムを経由しない米ドル建て資産へのアクセスを広げています。
新興国や途上国では、自国通貨への信認低下やインフレ局面で米ドル需要が高まりやすくなります。BISは、ステーブルコインの普及が米ドル流動性への新しい入口を作り、いったんドル化が定着すると元に戻しにくくなると指摘しました。金融当局にとっては、金利政策や資本移動管理の効き目が弱まるリスクにつながります。
今回のワーキングペーパーは、ステーブルコインを決済手段としてだけでなく、国境を越える資金移動や金融政策に影響を及ぼす存在として捉えています。発行体や取引所を規制するだけでは、規制の枠外を含む保有・移転の実態を十分に把握できない可能性があり、従来の銀行システムを前提とした政策の見直しが課題になります。
各国当局は、ステーブルコインを金融制度の中に取り込む枠組みの整備を進めています。BISの分析が示した次の焦点は、新興国当局がデジタルなドル化にどう対応するか、そして各国の規制が国境を越える実際の資金フロー管理にどこまで機能するかです。
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