サークルの共同創業者兼CEOジェレミー・アレール氏は13日、AIエージェント向けの超少額決済機能「Circle Nano Payments」をまもなく投入し、独自レイヤー1ブロックチェーン「Arc」のメインネット公開とネイティブトークンの導入検討を進めていると明らかにしました。AIが自律的にサービス利用料や推論コストを支払う市場をにらみ、USDCを軸にした決済インフラを本格展開する局面に入りました。
アレール氏は講演で、「Circle Nano Paymentsは近くローンチする。1取引あたり100万分の1ドル($0.000001)という水準まで価格を下げられる」と話し、AIの推論処理に対するストリーミング課金などを具体例に挙げました。Arcについては、「ガバナンス、インセンティブ、経済的なアラインメントの仕組みを整え、最終的にはプルーフ・オブ・ステークへ移行するためのトークンを検討している」と説明しています。人間が操作する決済ではなく、AIが自動でAPI利用料やデータ取得料、計算資源の費用を支払う前提で開発が進んでいます。
Circleはその受け皿として、「Circle Gateway」をArcに組み込みます。これはUSDCをチェーンをまたいで扱いやすくする仕組みで、AIエージェントが許可不要でUSDCを利用でき、クロスチェーンの受け渡しも1秒未満で終えられるようにします。HTTP 402を活用したAI向け決済プロトコル「x402」との接続も進めており、講演ではx402上の決済の99%がUSDC建てだと紹介されました。
Arcの仕様も、こうした用途を意識したものです。ArcはEVM互換のオープンなレイヤー1で、手数料をUSDC建てで支払えるため、価格変動の大きいネイティブ資産をガス代に使う必要がありません。決済確定は平均0.5秒前後のサブセカンドで、機関投資家向けにオプトイン型のプライバシー機能も備えます。AIエージェントには予測しやすいコストと低遅延、金融機関にはコンプライアンス対応と秘匿性が求められるため、サークルはこの2つを同じチェーン上で両立させようとしています。
Arcのテストネットは2025年10月28日に公開され、最初の90日で1億5000万件超のトランザクション、約150万のアクティブウォレットを記録しました。平均決済時間は約0.5秒です。メインネットは2026年内の公開を予定しており、アレール氏は為替取引向けサービス「StableFX」もArcメインネットと連携して強化し、韓国ウォン建てステーブルコイン発行者との協力でKRW-USDC間のオンチェーンFXを推進する考えを示しました。
テストネットの参加企業の顔ぶれも重いです。ブラックロック、ゴールドマン・サックス、Visa、Mastercard、HSBC、ドイツ銀行、BNY、ステート・ストリート、アポロなど、100社を超える金融・決済プレーヤーがArcの検証に加わっています。エコシステム側でも、トークン化資産ではブラックロックやセキュリタイズ、レンディングやDeFiではAave、ユニスワップ・ラボ、Morpho、Maple、Centrifuge、AI分野ではアンソロピックの参加が挙がっており、実験段階から機関マネーと暗号資産ネイティブの双方を取り込んでいる点が目立ちます。
USDCの流通基盤を土台にできることも、サークルにとって大きい材料です。講演では、USDCがクロスチェーン流通の60%超を占めていること、Circle Payments Network(CPN、銀行間の送金ネットワーク)に多数の金融機関が参加していることが紹介されました。Circle Cross-Chain Transfer Protocol(CCTP、USDCのクロスチェーン移転基盤)の累計移転額は140億ドル規模に達しており、Arcはこうした既存のUSDCインフラをAI決済へ引き寄せる役割を担います。
サークルは今年3月、開発者やAIエージェントがUSDCやArcを扱うためのオープンソースツール群「Circle Skills」も公開しており、AI向けの実装環境づくりを急いでいます。Arcを選んだ理由は明確で、1件ごとの金額が極小でも採算が取れる手数料設計、即時に近い決済、ステーブルコイン建ての分かりやすいコスト、そして金融機関が乗りやすいプライバシーと相互運用性を同時に求めた結果です。
次に動くのは、Nano Paymentsの提供開始とArcメインネットの公開です。アレール氏は、トークンの設計とPoS移行の詳細を近く公表するとしており、ArcとStableFXの立ち上げ時期も合わせて示すことになります。
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