暗号資産

クラリティ法案どうなる?いつ成立するのかをわかりやすく解説【2026年7月最新】

当サイトにはPRリンクを含む場合があります。

米国で「クラリティ法案」という法律案が注目を集めています。

最初に結論をお伝えします。

クラリティ法案は、2026年7月の時点でまだ成立していません。

米下院は通過しましたが、上院で止まったままです。本会議での採決すら行われていません。

「もう決まった話」として書かれた解説記事も見かけますが、実際はいま最終盤の攻防が続いている段階です。

この記事では、法案の中身を予備知識ゼロからわかりやすく説明し、ビットコインにどんな影響があるのかまで整理します。成立しなかった場合のシナリオも同じ重さで扱います。

この記事のポイント

  • クラリティ法案は「暗号資産をどの役所が監督するか」を決める法律案
  • 2026年7月時点で上院に止まっており、成立していない
  • ビットコインにとっては「新しく変わる」より「いまの扱いが覆らなくなる」意味が大きい

クラリティ法案とは?3分でわかる全体像

項目内容
正式名称Digital Asset Market Clarity Act
日本語名デジタル資産市場明確化法案
法案番号H.R.3633(第119議会)
提出元米下院
目的暗号資産の監督権限をSECとCFTCで分ける
対象暗号資産の発行、取引所、仲介業者、カストディ
主な中身暗号資産を3つに分類し、それぞれの監督官庁と義務を定める
現在の状態上院で審議中(成立していない)
関連法GENIUS法(ステーブルコインを対象とする法律、成立済み)

クラリティ法案がやろうとしていることは、突き詰めると1つです。

暗号資産を、どの役所が監督するのかを法律で決めることです。

米国には金融を監督する役所が複数あります。株式を見ているのがSEC(米証券取引委員会)、金や原油といった商品の取引を見ているのがCFTC(米商品先物取引委員会)です。

ところが暗号資産は、株式にも商品にもきれいに当てはまりません。

そのため「この銘柄はSECの担当か、CFTCの担当か」で長年もめてきました。担当が決まらないと、取引所も企業も何を守ればいいのか分かりません。

クラリティ法案は、この線引きを法律の条文として書き込みます。

ジーニアス法との違いとは?

よく混同されるのがジーニアス法です。

ジーニアス法はステーブルコインだけを対象とする法律で、すでに成立しています。一方のクラリティ法案は、暗号資産の市場全体を対象とします。

ジーニアス法が「ドル連動コインの取扱説明書」だとすれば、クラリティ法案は「暗号資産市場そのものの交通法規」に当たります。

【現在地】クラリティ法案は今どこまで進んだのか

この章だけ日付が多く出てきます。

法案の進み具合はここに集約しているので、状況を確認したいときはこの章を見てください。以降の章は日付に依存しない内容にしています。

市場はクラリティ法案の成立確率をどう見ているか?

2026年に明確法が制定されましたか?
はい 35% · いいえ 66%
View full market & trade on Polymarket

法案が成立するかどうかは、予測市場でも取引されています。世論調査ではなく、実際にお金を賭けた人たちの見立てが数字になったものです。

この市場が問うているのは1つだけです。2026年12月31日までに、上下両院を通過して大統領が署名するか。

委員会の通過や、上院だけの可決では成立とみなされません。つまりこの数字は、年内にすべて通り抜ける確率を表しています。

法案が法律になるまでの6ステップと現在地

米国の法案は、いくつもの関門を順番に通過しないと法律になりません。

日本のニュースでは「可決」という言葉がどの段階にも使われるため、混乱のもとになっています。実際の道のりは次のとおりです。

ステップ何をする段階か状況
① 下院で可決下院の本会議で過半数の賛成を得る完了(2025年7月17日・294対134)
② 上院の委員会で採決担当委員会が修正を加えて採決する(マークアップ)完了(農業委員会2026年1月29日/銀行委員会2026年5月14日・15対9)
③ 上院の議事日程に掲載本会議にいつでも掛けられる状態になる完了(2026年6月1日・Calendar No.423)
④ 上院の本会議で可決まず議事妨害を止めるのに60票が必要。可決自体は過半数いまここで停止中
⑤ 下院が上院修正版を再可決両院の文言をそろえる未着手
⑥ 大統領が署名ここで初めて法律になる未着手
(成立後)施行当局が細かい規則を作り、実際に運用が始まる未着手

注目してほしいのは④です。

「上院の委員会を通過した」というニュースが5月に流れましたが、これはステップ②に過ぎません。

委員会は言わば予選です。本戦である本会議の採決は、まだ一度も行われていません。

これまでの経緯

時系列で整理します。

時期出来事
2025年7月17日下院が294対134で可決。同じ週にGENIUS法も成立した
2025年9月18日上院が法案を受け取り、銀行委員会に付託
2026年1月29日上院農業委員会が関連法案を党派に沿った投票で可決
2026年3月17日SECとCFTCが共同解釈を公表。法案とは別に行政レベルの整理が進む
2026年5月14日上院銀行委員会が15対9で可決。民主党から2人が賛成に回った
2026年6月1日上院の議事日程に掲載(Calendar No.423)
2026年7月22日銀行委員会版と農業委員会版をまとめた統合案が公表される
2026年7月23日上院多数党院内総務のスーン議員が、夏季休会前の可決は見込めないと発言

5月14日の委員会採決では、共和党の13人全員に加え、民主党のギャレゴ議員とアルソブルックス議員が賛成しました。

ただし両議員とも、賛成は条件付きだと明言しています。アルソブルックス議員は採決の際、自らの賛成票を作業を続けるためのものと説明し、課題がまだ残っていると述べました。

7月22日に公表された統合案は、公表と同じ日に民主党が拒否しました。倫理に関する条項の書き方が受け入れられないという理由です。

8月上旬の休会というタイムリミット

いま最大の焦点は日程です。

米議会は8月上旬から夏季休会に入ります。休会に入ると、法案は9月まで動きません。

さらに2026年11月には中間選挙が控えています。9月以降は選挙運動が本格化し、意見が割れる法案を採決する余裕はなくなると見られています。

つまり休会前のわずかな期間が、事実上の勝負どころという状況です。

ただし多数党院内総務のスーン議員自身が、休会前の可決は見込めないという見通しを示しました。議事を進める前提となるクロチャー動議(議事妨害を止めるための手続き)も、まだ提出されていません。

なお、財務長官のベッセント氏は7月21日の時点で、法案が「ゴール1ヤード手前」にあると述べていました。

ただしこれは統合案の公表とその拒否、そしてスーン議員の発言より前の見解です。政権側が推進の姿勢を崩していないことは確かですが、直近の展開を踏まえた発言ではない点に注意してください。

見通しは関係者の間でも割れている、というのが正確な状況です。

なぜ米国は10年もルールを決められなかったのか

ここが多くの解説記事で飛ばされる部分です。

「SECとCFTCの管轄を明確化する」という一文だけを読んでも、なぜそれが10年もかかる難題なのかは分かりません。背景を押さえると、法案の意味が立体的に見えてきます。

SECとCFTCはそもそも何が違う組織か

まず2つの役所の性格が根本的に違います。

項目SEC(証券取引委員会)CFTC(商品先物取引委員会)
監督する対象株式、社債など「証券」金、原油、穀物など「商品」の取引
根拠となる法律証券法・証券取引所法商品取引所法
規制の考え方情報開示を徹底させて投資家に判断させる市場の健全性と価格操作の防止を重視
発行体への義務詳細な開示書類の提出を求める発行体そのものへの義務は薄い
組織の規模大きいSECより小さい

大事なのは規制の考え方の違いです。

SECの世界では、何かを発行して資金を集める側に重い開示義務がかかります。会社の財務状況やリスクを事細かに公開しなければなりません。

CFTCの世界では、そこまでの義務はありません。監督の中心は、取引の場が公正に機能しているかどうかに置かれます。

同じ暗号資産でも、どちらの役所の管轄になるかで、事業者の負担がまったく変わります。

だからこそ業界は線引きを求め続けてきました。

リップル・コインベース訴訟で実際に起きたこと

抽象論では実感が湧かないので、実際に起きたことを見ます。

SECは長年、この曖昧さを訴訟によって埋めようとしてきました。業界が「執行による規制」と批判してきた手法です。

代表例がリップル社をめぐる裁判です。SECはXRPの販売が未登録の証券販売に当たると主張し、同社を提訴しました。

裁判の結果は、業界に強い印象を残しました。同じXRPでも、販売の相手や方法によって証券に当たるかどうかの判断が分かれたためです。

つまりトークンそのものが証券なのではなく、売られ方によって扱いが変わるという考え方が示されました。

大手取引所のコインベースも、上場している銘柄が未登録の証券に当たるとしてSECから提訴されました。この訴訟は後に取り下げられています。

ここに問題の本質があります。

ルールが訴訟のたびに形作られる状態では、事業者は事前に何を守ればいいのか分かりません。裁判の結論が出るまで、自分が違法なのかどうかも分からないのです。

クラリティ法案は、この状態を条文で終わらせようとしています。

法案の中身:暗号資産を3つに分ける

3分類と、それぞれの監督官庁

クラリティ法案の骨格は分類です。

暗号資産を3つの箱に分け、箱ごとに担当する役所と守るべきルールを定めます。

分類どんなものか監督する役所イメージされる例
投資契約資産資金調達のために発行され、まだ運営主体がいるトークンSEC開発チームが売り出した直後のトークン
デジタルコモディティブロックチェーンの利用によって価値が生まれ、支配者がいないものCFTC分散が進んだ主要通貨
決済用ステーブルコイン米ドルなどに価格を連動させたもの銀行を監督する当局ドル連動コイン

この分類には、これまでの議論を踏まえた仕掛けがあります。

投資契約資産という肩書きは、永久ではありません。

発行体以外の人の手に渡って市場で転売される段階に入ると、そのトークンはデジタルコモディティに戻ります。監督もSECからCFTCへ移ります。

先ほどのハウイテストの話を思い出してください。

「同じトークンでも売られ方で扱いが変わる」という裁判所の考え方を、法案は条文の形で書き直しています。ハウイテストを廃止するのではなく、その外側に別の道を用意する組み立てです。

「デジタルコモディティ」の判定基準

では、どうなればデジタルコモディティと認められるのでしょうか。

法案は「成熟したブロックチェーンシステム」という概念を置きます。条文の定義は明快です。

共通の支配下にある個人や集団によって支配されていないこと。

具体的な目安として、次のような要素が挙げられています。

  • 取引やガバナンスの検証が実際に機能している
  • ソースコードが公開されている
  • 透明であらかじめ定められたルールに沿って動いている
  • 単独の者や共通の支配下にある集団による支配がない

支配の判定にはトークンの保有比率も関わり、20%以上を握る主体がいる状態は支配とみなされる扱いです。

ここが投資家にとって重要な意味を持ちます。

分散が進んだ通貨ほど、規制が軽いCFTC側に入りやすくなります。

逆に、発行体が大量に保有していたり、運営が中央集権的だったりする銘柄は、SEC側にとどまる可能性が残ります。

なお、この判定は自動的に行われるものではなく、認証の手続きを経る仕組みが想定されています。実際の運用は、成立後に当局が定める規則を待つ必要があります。

DeFiと自己保管の扱い

もう1つ、業界が強く求めてきた論点があります。

自分のウォレットで暗号資産を保管する権利です。

法案は米国の個人に対し、ハードウェアやソフトウェアのウォレットで自ら保管する権利と、金融機関を通さず個人同士で直接取引する権利を認める条文を置いています。

DeFiについても適用除外の条文があります。

除外の対象として挙げられているのは、取引の検証、計算作業の提供、利用者向け画面の提供、ソフトウェアやウォレットの開発といった行為です。

ただし歯止めもあります。

詐欺や価格操作、虚偽の報告を取り締まる権限は、除外の対象になりません。

さらに第604条が、利用者の資産を預からない開発者を送金業者としての登録義務から外します。

この条文が後に大きな争点になります。詳しくは対立の章で扱います。

成立したらビットコイン価格はどうなるのか

ここが最も関心の高い部分だと思います。

ただし価格の話には、慎重な扱いが必要です。断定的な予測は誰にもできません。ここでは実際に起きたことと、考え方の枠組みを示します。

過去の節目で価格は実際どう動いたか

参考になる場面が2回あります。

1回目は2025年7月、下院を通過したときです。

この週は「クリプトウィーク」と呼ばれ、暗号資産関連の法案が相次いで動きました。ステーブルコインを対象とするGENIUS法が成立したのも同じ週です。

この週にビットコインは12万3,000ドル台をつけ、暗号資産の時価総額の合計は初めて4兆ドルを超えました。

数字だけを見ると法案の効果に見えます。ところが日付を並べると、話が変わります。

ビットコインが12万3,000ドル台の最高値をつけたのは7月14日で、下院が可決した17日よりです。時価総額が4兆ドルを超えたのは18日で、こちらはGENIUS法が署名された日に当たります。

つまり、どちらもクラリティ法案の可決への反応として切り出すことはできません。

2回目は2026年5月、上院の委員会を通過したときです。

ここは報道の評価が割れました。

上昇したとする報道では、ビットコインが8万2,000ドル台をつけたと伝えられています。

一方で「市場は反応しなかった」とする見方もありました。ビットコインの予想変動率が歴史的な低水準にとどまり、市場がこのイベントをほとんど織り込んでいなかったという指摘です。むしろ取引所関連銘柄のオプションのほうが高い変動を織り込んでおり、投資家は「ビットコインより特定企業に効く法案」と見ていたという分析も出ました。

この2回から読み取れることがあります。

法案の進展がビットコイン価格に与えた影響は、想像されるほど明確ではありません。

反応が大きかったのは、暗号資産取引所や関連企業の株式のほうでした。規制が明確になれば事業の見通しが立つ企業のほうが、直接の恩恵を受けるためです。

時間軸を分けて考える

影響を1つの答えで語ろうとすると混乱します。時間軸を分けて考えると整理できます。

時間軸何が効くか想定される動き
短期(数日〜数週間)ニュースへの反応と思惑進展や停滞の報道で上下しやすい。すでに織り込まれていれば反応は小さい
中期(数か月〜1年)規制リスクの後退米国の規制をめぐる不確実性が下がり、参入をためらっていた資金が動きやすくなる
長期(数年)制度としての定着役所の解釈ではなく法律に基づく運用が始まり、事業計画が立てやすくなる

短期の値動きに法案の本質はありません。

法案が本当に効いてくるのは中期から長期です。しかもその効き方は、価格に直接ではなく、参加者の増加という形をとります。

金融機関が示す強気の価格目標を目にすることもあります。ただしその多くは、上院での可決などを前提にした条件付きの予測です。

前提が崩れれば数字は意味を持ちません。予測目標を投資判断の根拠にするのは避けたほうが安全です。

参考までに、ビットコインは前年の高値から大きく水準を下げた状態が続いています。最新の価格は必ず取引所のチャートで確認してください。

機関投資家・ETF・銀行への波及

「法案が通れば機関投資家が入ってくる」という説明はよく見かけますが、これも実態を確認する必要があります。

すでにビットコインの現物ETFは承認され、取引されています。

イーサリアムなど他の主要通貨についても同様です。ETFの審査プロセスは短縮され、上場までの期間も大幅に縮まりました。

つまり投資家がアクセスする手段という点では、法案がなくてもすでに整っています。

では、法案が効くのはどこでしょうか。

1つは銀行です。

法案には、銀行が顧客の暗号資産を預かるときに不利な会計上の扱いを当局が課すことを禁じる条文があります。この扱いは銀行が暗号資産の保管業務に踏み込む障害とされてきました。

もう1つは、事業の継続性への信頼です。

役所の解釈で動いている状態では、企業は長期の投資判断を下しにくくなります。法律に書かれれば、5年10年の計画を立てられます。

一方で、銀行業界は法案の一部に強く反対しています。この点は次の章で扱います。

成立を阻んでいる3つの対立

法案が上院で止まっている理由を見ていきます。

多くの解説記事は賛成側の視点だけで書かれていますが、反対側の言い分を知らないと今後の見通しは立てられません。

前提として、米上院の議席は共和党が53です。議事妨害を止めて採決に進むには60票が必要になります。

単純に計算すれば民主党から7人の賛成で足ります。ただし共和党内にも慎重な議員がいるため、実際には7人から9人程度が必要と見られています。

委員会の段階で賛成に回った民主党議員は2人で、しかも条件付きでした。本会議で何人が賛成するかはまた別の話であり、交渉はいまも続いています。

対立①:倫理条項

最も大きな争点はここです。

論点は「政府の高官が暗号資産で利益を得ることを、どこまで制限するか」です。

背景には、大統領本人の暗号資産関連の収入があります。2026年6月30日に公開された資産開示では、2025年の暗号資産に関連する所得が約14億ドルに上ると報じられました。ミームコインのライセンス収入が約6億3,500万ドル、関連事業のトークン販売による収入が5億ドル超とされています。

ただし集計の範囲によって金額に幅があり、報道ごとに数字が異なる点には注意が必要です。

暗号資産の市場ルールを決める法律を、暗号資産で利益を得ている政権の下で通すことになります。民主党はここに強く反発してきました。

7月22日に公表された統合案では、初めて倫理条項が明文化されました。大統領や政府高官による暗号資産の保有や発行を制限する内容です。ホワイトハウス側は、大統領がこれまでで最も広範な倫理条項に同意したと説明しています。

しかし民主党は同じ日に拒否しました。理由は2つです。

1つは、条項の執行を司法省が担当する仕組みになっている点です。現職の大統領を司法省が取り締まるとは考えにくい、という指摘が出ました。

もう1つは、この条項が2029年に失効することになっている点です。次の政権とともに保護がなくなるのでは意味がない、という主張です。

対立②:ステーブルコインの利回り

2つ目は銀行業界との対立です。

争点は「取引所などが、ステーブルコインを預けた利用者に利回りを払っていいのか」という点にあります。

すでに成立しているGENIUS法は、ステーブルコインの発行体が利息を払うことを禁じています。しかし取引所が報酬という形で似た仕組みを提供できるなら、抜け道になるのではないかという懸念が出ました。

上院の委員会では妥協案がまとまりました。利用者がただ持っているだけで受け取れる利回りは禁じ、取引などの活動に連動した報酬は認めるという線引きです。銀行預金の利息と経済的に同じ収益は禁止されます。

この妥協に、銀行業界は納得していません。

JPモルガンの最高経営責任者であるジェイミー・ダイモン氏は、この仕組みが「いずれ吹き飛ぶ」という強い表現で警告しました。

主張の中身はこうです。

暗号資産の事業者には、銀行に課されている資本の積み立てや、資金洗浄を防ぐための規制がありません。同じような利回りを、同じ守りなしに提供すれば、規制の外側で銀行のような機能が育ってしまう、という懸念です。

銀行にとっては預金の流出につながる話でもあり、業界団体は利回り付きステーブルコインの全面禁止を求めて活動を強めていると報じられています。

対立③:DeFiと違法金融対策

3つ目は捜査機関との対立です。

先に触れた第604条が問題になっています。利用者の資産を預からない開発者を、送金業者としての登録義務から外す条文です。

開発者の保護は業界の悲願でした。ソフトウェアを書いただけで金融事業者の義務を負わされては、開発が成り立たないという主張です。

一方で、捜査に関わる立場からは反対の声が上がっています。全米地方検事協会は、この条項が暗号資産の絡む刑事捜査を実質的に妨げると警告しました。

委員会の審議では、DeFiのサービスに制裁を科す権限を財務省に与える修正案を民主党が支持しましたが、否決されています。

3つの対立は、それぞれ別の相手と争っています。

倫理条項は政治の問題、ステーブルコインは銀行業界との問題、DeFiは捜査機関との問題です。1つを解決しても他が残るため、まとめて片付けるのが難しくなっています。

もし成立しなかったらどうなるか

成立を前提にした解説が多いなかで、この章はあえて逆の可能性を扱います。

「どうなるか」を知りたい人にとって、こちらのほうが重要かもしれません。

会期切れは廃案を意味する

米国の議会には会期という区切りがあります。

会期の終わりまでに成立しなかった法案は、そこで廃案になります。

次の議会に自動的に引き継がれることはありません。もう一度、法案の提出からやり直しです。

いまの第119議会は2027年の初めに終了します。実務上は、2026年12月中の議事が最後の機会になります。

そして11月には中間選挙があります。選挙で議会の構成が変われば、法案への支持の分布も変わります。いまの内容のまま出し直せる保証はありません。

法案を推進してきたルミス上院議員からは、この議会を逃せば暗号資産に関する立法の次の機会は数年先になるという見方も示されています。

つまり残された時間は、想像よりずっと短いのが実情です。

不成立でも行政解釈は残る

ただし、成立しなければすべてが白紙に戻るわけではありません。

すでに触れたとおり、SECとCFTCは共同解釈を公表しています。列挙された銘柄をデジタルコモディティとする整理は、法案とは別に動いています。

ビットコインがデジタルコモディティとして扱われる状態は、法案が通らなくても当面続きます。

問題は耐久性です。

役所の解釈は、役所の判断で変えられます。政権が交代し、規制に厳しい人物が委員長になれば、方針は変わり得ます。

不成立の本当の代償は、いまの好ましい環境が「いつでも巻き戻せる状態」で残り続けることです。

企業にとっては、長期の投資判断を下しにくい状態が続きます。

今後の展開と予測市場の数字

今後の展開を3つに整理します。

シナリオ内容投資家への意味
① 休会前後に成立倫理条項で合意が成立し、上院を通過して署名まで進む規制の不確実性が大きく下がる
② 次の議会へ持ち越し会期内に成立せず廃案。次の議会で仕切り直しいまの行政解釈が続くが、覆るリスクは残る
③ 長期にわたり実現せず政治情勢が変わり、立法の機会が遠のく役所の解釈頼みの状態が長期化する

参考として、法案の成立確率を取引する予測市場も存在します。

2026年7月27日に確認した時点では、年内に法律として署名される確率は38%前後で取引されていました。

ただしこの数字は非常に大きく動きます。7月中旬には30%台前半まで下げ、倫理条項の合意が報じられた直後には40%台まで戻す、といった振れ幅がありました。

予測市場の数字は、確認した日付とセットで見なければ意味を持ちません。

現時点では、成立と不成立のどちらもあり得る状態が続いています。

よくある質問

Q1. クラリティ法案はいつ成立しますか。

成立の時期は決まっていません。上院の本会議での採決がまだ行われていないためです。8月上旬の議会の休会までが当面の焦点ですが、休会前の可決は見込めないという見方も示されています。

Q2. 法案が成立したら、持っているビットコインは売るべきですか。

法案を理由に売買を判断する必要性は高くありません。ビットコインがCFTCの管轄下にあるという扱いは、法案の成否にかかわらず当面変わらないためです。投資判断はご自身の資金計画に基づいて行ってください。

Q3. 自分が持っている銘柄は証券扱いになりますか。どう判断すればよいですか。

判定の目安は分散の度合いです。特定の運営者や集団が支配しておらず、コードが公開され、透明なルールで動いているものはデジタルコモディティ側に入りやすくなります。発行体が大量に保有している銘柄は、扱いが揺れる可能性が残ります。ただし最終的な判定は当局の規則を待つ必要があります。

Q4. 成立したら、いつからルールが変わりますか。

大統領の署名で法律になっても、その日からすべてが変わるわけではありません。当局が細かい規則を作る作業が必要で、実際の運用開始まで相応の期間がかかります。成立と施行は別物として捉えてください。

Q5. なぜ反対している人がいるのですか。

3つの対立があります。1つ目は、政府高官が暗号資産で利益を得ることをどう制限するかという倫理の問題です。2つ目は、ステーブルコインの利回りが銀行預金の代わりになることへの銀行業界の懸念です。3つ目は、DeFiの開発者を保護する条文が捜査を妨げるという捜査機関側の指摘です。

Q6. GENIUS法とは何が違うのですか。

GENIUS法はステーブルコインだけを対象とする法律で、すでに成立しています。クラリティ法案は暗号資産の市場全体を対象とし、まだ成立していません。対象の広さと成立状況の両方が異なります。

Q7. 日本に住んでいても影響はありますか。

直接の適用はありません。影響は相場を通じた経路、世界規模の取引所のサービス設計を通じた経路、各国の制度の議論を通じた経路の3つで間接的に届きます。

Q8. 成立しなかったらどうなりますか。

会期の終わりまでに成立しなければ廃案となり、次の議会で提出からやり直しになります。ただしSECとCFTCの共同解釈は残るため、現在の扱いが即座に変わるわけではありません。問題は、その扱いが政権の判断で覆り得る状態のまま続くことです。

Q9. 次に注目すべきタイミングはいつですか。

上院の本会議で議事を進める手続きが取られるかどうかが最初の関門です。次いで8月上旬の休会入り、そして11月の中間選挙が節目になります。

まとめ

クラリティ法案は、暗号資産をどの役所が監督するかを法律で決める試みです。

2026年7月時点で上院に止まっており、成立していません。倫理条項、ステーブルコインの利回り、DeFiの3つの対立が壁になっています。

ビットコインにとっての意味は、新しい扱いが始まることではありません。すでに定着しているCFTC管轄という整理を、役所の解釈から法律へ格上げし、覆りにくくすることにあります。

日本の投資家に直接の適用はなく、影響は相場と事業者の設計を通じて間接的に届きます。

ニュースを読むときは、委員会の可決と本会議の可決を区別してください。この違いが分かれば、進み具合を正しく判断できます。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産の売買を推奨するものではありません。暗号資産は価格変動が大きく、元本を割り込む可能性があります。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、その後の状況変化を反映していない場合があります。

  • この記事を書いた人

gamefi.town編集部

gamefi.townは、ブロックチェーンゲームと暗号資産・Web3領域を専門に扱うメディアです。最新のトレンドや注目トピックをリアルタイムで発信しています。実際の体験や一次情報の精査をもとに分かりやすく解説。公式Xでは最新ニュースをリアルタイムで発信中です。ぜひフォローして最新情報をご確認ください。

-暗号資産