2016年のHongCoin ICOで、スマートコントラクトのinteger overflowバグ(計算結果が上限を超えて値が崩れる不具合)によって動かせなくなっていた約1,003.62ETHが、2026年5月末から6月初旬にかけて回収されました。約3.2億円相当の資金が9年ぶりに動いた形で、イーサリアム初期の欠陥が、結果的に資金流出ではなく保全につながっていた点でも注目を集めています。

X上で共有された分析によると、この資金は2016年のHongCoin ICOに参加した48人から送られたETHでした。送金先のコントラクトにはinteger overflowの不具合があり、預かったETHは外部から奪われるのではなく、誰も引き出せない状態で固定されました。当時は事実上失われた資金と受け止められていましたが、バグの性質そのものが第三者による持ち出しも難しくしていたとみられます。
状況が動いたのは2026年です。ホワイトハット開発者(善意の立場で脆弱性を検証する開発者)のフロラン氏が、コントラクトの不具合を逆手に取る41件のオンチェーントランザクションを実行し、ロックされていたETHの回収に成功したと報告されました。共有された内容では、回収対象は約1,003ETHに及び、資金は当時の48人の参加者へ返還する前提で扱われています。
この事例の異例さは、バグが「資金を失わせた原因」であると同時に、「長期間守った要因」でもあった点にあります。通常、初期のスマートコントラクトの不具合は資金流出や永久喪失の象徴として語られますが、HongCoinでは不正流出の経路にはならず、特定条件を満たした場合にだけ回収の余地を残す構造になっていました。今回の救出は、その皮肉な構図をオンチェーン上で示した事例といえます。
フロラン氏の対応は、資金を新たに動かしただけでなく、2016年当時の参加者に返還可能な状態まで持ち込んだ点でも意味があります。9年間手つかずだった約1,003.62ETHが実際に回収フェーズへ移ったことで、イーサリアム黎明期に残された不具合資産でも、条件次第では再評価と救出が進む余地があることを示しました。
