米国の暗号資産市場ルールを定めるクラリティー法案は、7月4日までの成立・署名という目標を逃した一方で、7月3日から6日にかけて法執行団体の反対緩和と上院側の条文調整が進み、審議再開後の通過期待が持ち直しています。焦点は「署名に間に合わなかった法案」から、「8月7日までに上院60票を固められるか」へ移りました。

この数日で最も大きかった変化は、法執行側の姿勢です。全米郡保安官協会(MCSA)は7月3日付の書簡で、H.R.3633に対する立場を反対から中立へ切り替えました。MCSAは正式な支持までは表明していませんが、第604条をめぐる政権側との協議で解釈と運用に追加の明確性が得られたとして、従来の反対姿勢を弱めました。
MCSAは同時に、州・地方の法執行機関を財務省の調査や関連諮問機関へ関与させる修正、デジタル資産犯罪の捜査に必要な訓練やフォレンジック支援の強化を求めています。つまり、法案の障害が完全に消えたわけではありません。反対から中立へ移ったことで、上院交渉の最大級の摩擦が小さくなったことが重要です。
全米黒人法執行幹部協会(NOBLE)も、法案がマネーロンダリング、制裁違反、無免許送金などに対する既存の刑事権限を弱めないとして支持を表明しています。法執行団体の一部が相次いで柔軟な姿勢を見せたことで、共和党だけでなく民主党票も必要な上院審議に向け、超党派合意を作る余地が広がりました。
クラリティー法案は、暗号資産のうちデジタル商品に当たる取引を商品先物取引委員会(CFTC)中心に監督し、証券取引委員会(SEC)との役割分担を明確にする市場構造法案です。米下院ではすでに通過しており、上院では銀行委員会版と農業委員会版の調整が続いています。上院本会議で前に進めるには、少なくとも60票が必要になります。
7月4日までの署名が実現しなかったこと自体は、日程面では痛手です。上院議員は独立記念日休会を挟んで7月13日ごろに戻る予定で、7月後半から8月上旬までが実質的な協議期間になります。8月7日は上院が夏休みと選挙運動シーズンに入る前の節目で、この時期を逃すと2026年内の成立はかなり難しくなります。
上院側では、銀行委員会版と農業委員会版を統合する最終草案テキストの公開が次の準備段階になります。テキストが示されれば、議員や業界団体は「いま採決対象になりうる法案の中身」を確認しやすくなります。7月13日以降の本格審議に向け、条文の見える化が票固めの前提になります。
残る論点はなお重いままです。トランプ大統領と家族の暗号資産関連収益をめぐる倫理規定、顧客資産を管理しないDeFi開発者やソフトウェア提供者をどう扱うかに関わる第604条、ステーブルコインの利回り規制が調整対象として残っています。特に倫理規定は民主党票の確保に直結しやすく、上院60票への道筋を左右します。
市場関係者の見方も、この3日でやや前向きに傾きました。予測市場では成立確率が4割から5割前後で推移しているとの投稿が広く共有され、ブルームバーグ・インテリジェンスによる7月通過確率60%との見方も引用されています。楽観論は、法執行団体の支持強化と委員会間調整の進展を根拠にしています。
上院では、7月13日以降に統合版テキストの確認と本会議審議に向けた票固めが進む見込みです。次の節目は8月7日で、それまでに法執行側の中立転換を超党派合意へつなげられるかが、2026年内成立の現実味を左右します。
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