仮想通貨(暗号資産)の金商法改正で、自分の取引は結局どう変わるのでしょうか。2026年7月15日、暗号資産を金融商品取引法(金商法)の対象とする改正法が国会で成立しました。7月23日には公布され、法律としては確定しています。
ただし、実際にルールが動き出す日と、税率が20%に下がる年は、まだ決まっていません。細かい取り決めを定める政令が公表されていないためです。「2028年1月から」と書いている記事もありますが、現時点では確定した情報ではありません。
この記事では、次の4点を金融庁と国会の公式資料をもとに整理します。
- 改正で何が変わるのか(規制の移し替え・インサイダー規制・情報開示)
- いつから変わるのか(確定している日と、まだ決まっていない日)
- 税金がどう変わるのか(20%の申告分離課税と損失の繰越)
- 自分が減税の対象になるのか(対象外になり得るケース)
仮想通貨の金商法改正とは|資金決済法からの移管で変わること
まず全体像を表で確認します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法律名 | 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律 |
| 成立日 | 2026年7月15日(参議院本会議で可決) |
| 公布日・法律番号 | 2026年7月23日・法律第64号 |
| 規制の移し替え | 資金決済法 → 金融商品取引法 |
| 暗号資産の扱い | 有価証券とは別の枠組みの金融商品として金商法の対象に |
| 主な新設規制 | インサイダー取引規制、発行者の情報開示義務、ステルスマーケティング規制 |
| 業者の名称 | 暗号資産交換業者 → 暗号資産取引業者 |
| 税率の変更 | 雑所得・総合課税(最大55.945%)→ 譲渡所得・申告分離課税20.315%(いずれも復興特別所得税を含む) |
| 暗号資産部分の施行日 | 公布から1年以内で政令が定める日(未確定) |
| 課税の適用開始 | 施行日の属する年の翌年1月1日以後(未確定) |
資金決済法から金商法へ移る意味

これまで暗号資産は、資金決済法という法律で扱われてきました。送金や決済の手段としての側面が重視された法律です。今回の改正で、暗号資産の取引に関する規制は資金決済法から削除され、金商法へ移されます。
金商法は、株式や投資信託といった金融商品を扱う法律です。投資する人を守るための仕組みが厚く用意されています。
ただし、暗号資産が株式と同じ扱いになるわけではありません。金融庁は説明資料で、暗号資産を「有価証券とは異なる金融商品」として金商法に加えると説明しています。
金融審議会の報告書は、その理由をこう説明しています。暗号資産は法的な権利を表すものではなく、配当や残余財産の分配も行われません。そのため有価証券とは別の枠組みで規制するのが適当だ、という整理です。
つまり「株と同じ法律に入る」けれども「株と同じ商品になる」わけではありません。ここが読み違えやすい点です。
改正で変わる8項目の早見表|インサイダー規制から業者の名称変更まで

変更点を先にまとめます。それぞれの詳細は、このあとの章で扱います。
| 変わること | 現行 | 改正後 |
|---|---|---|
| 根拠となる法律 | 資金決済法 | 金融商品取引法 |
| インサイダー取引 | 直接の規制なし | 規制を新設(罰則・課徴金あり) |
| 発行者の情報開示 | 義務なし | 募集時の公表と年1回の定期情報を義務化 |
| 無登録業者の罰則 | 拘禁刑3年以下・罰金300万円以下 | 拘禁刑10年以下・罰金1,000万円以下 |
| 無登録業者との売買 | 有効 | 国内業者が取り扱っていない銘柄の売付けは原則として無効 |
| 業者の名称 | 暗号資産交換業者 | 暗号資産取引業者 |
| 顧客への補償原資 | 積立義務なし | 責任準備金の積立を義務化 |
| 税金 | 雑所得・総合課税で最大55.945% | 申告分離課税20.315%・損失は3年繰越 |
「特定暗号資産」とそれ以外の2区分|発行者がいるかで開示義務者が変わる

改正法は、暗号資産を2つに分けます。
ひとつが「特定暗号資産」です。特定の者だけが発行する権限を持つ暗号資産を指します。取引所が発行に関わるIEOトークンなどが当てはまります。
もうひとつが、それ以外の暗号資産です。ビットコインのように、発行を管理する主体がいないものが当てはまります。
この2区分で変わるのは、銘柄の情報を公表する義務を誰が負うかです。
| 区分 | 例 | 情報を公表する者 |
|---|---|---|
| 特定暗号資産 | IEOトークンなど | 発行者(発行者による資金調達を伴わない場合は暗号資産取引業者) |
| それ以外の暗号資産 | ビットコインなど | 暗号資産取引業者 |
なお、この2区分を「一号暗号資産」「二号暗号資産」と呼ぶ説明を見かけることがあります。これは現行の資金決済法の条文の並びに由来する古い呼び方です。今回の改正で新しく作られた区分ではありません。改正法が定めるのは「特定暗号資産」という区分です。
仮想通貨の金商法改正はいつから?施行スケジュールの全体像
「いつから変わるのか」は、確定している部分と未確定の部分に分かれます。ここを混ぜて理解すると誤解が生じます。
成立2026年7月15日・公布7月23日|ここまでは確定している
法案が国会を通るまでの流れは、次のとおり確定しています。
- 2026年4月10日:国会に提出(内閣提出法案)
- 2026年6月10日:衆議院の委員会で議決
- 2026年6月11日:衆議院本会議で可決
- 2026年7月14日:参議院財政金融委員会で議決
- 2026年7月15日:参議院本会議で可決・成立
- 2026年7月23日:公布(法律第64号)
法律が「成立」しても、それだけでは効力は生じません。公布されたあと、施行日を迎えて初めてルールが動き出します。
暗号資産部分の施行日は政令待ち|「公布から1年以内」だけが決まっている
暗号資産に関する部分の施行日について、改正法はこう定めています。公布の日から起算して1年を超えない範囲内で、政令で定める日から施行する、というものです。
公布が2026年7月23日ですから、施行日は2027年7月22日までのどこかになります。その具体的な日を定める政令は、まだ公表されていません。
つまり、正確に言えるのはここまでです。「2027年度中に施行される見通し」といった説明を見かけますが、これは報道や解説の見立てであり、公式に決まった日付ではありません。
同じ改正法に含まれる暗号資産以外の部分には、確定した施行日があります。
| 部分 | 施行日 |
|---|---|
| 暗号資産に関する規制 | 公布から1年以内で政令が定める日(未確定) |
| サステナビリティ情報の開示、成長資金の供給拡大 | 2027年4月1日 |
| 犯則調査手続のデジタル化 | 2027年10月1日 |
今回の改正法は暗号資産だけを扱うものではありません。この点も、報道を読むときに混乱しやすいところです。
暗号資産の罰則強化は施行日まで動かない|先に始まるのは有価証券側の規定

改正法のうち一部は先に動き出します。ただし、暗号資産の部分は含まれません。ここは混同されやすいところです。
「公布の日から起算して20日を経過した日」から施行されるのは、無登録業者への罰則の引き上げと、証券取引等監視委員会の犯則調査権限の追加です。これらは金融庁の施行期日の一覧で「有価証券に関する不公正取引規制等の見直し」に区分されています。公布日から数えると2026年8月中旬にあたります。
暗号資産を扱う無登録業者への罰則引き上げは、この先行分には入りません。暗号資産に関する規制は、施行期日の一覧で1年以内の区分に置かれています。
暗号資産の無登録業者が金商法の拘禁刑10年以下という水準の対象になるのは、暗号資産部分が施行されたあとです。それまでは、資金決済法の拘禁刑3年以下・罰金300万円以下が適用されます。
日付の計算は本記事によるものです。正確な日付は官報や政令で確認してください。
罰則が科されるのは業者であって、利用者ではありません。利用者にとっての意味は、施行日を迎えるまで無登録業者には現行水準の規制しか及ばない、という点にあります。利用している取引所が国内で登録を受けているかどうかは、金融庁の登録業者一覧で確認できます。
仮想通貨の税金はどう変わる?20.315%の申告分離課税と損失の3年繰越
多くの人が最も気にしているのが税金です。ここで押さえておきたいのは、税率は金商法改正で決まるものではないという点です。
税率は税制のルートで決まります。具体的には、令和8年度税制改正の大綱が2025年12月26日に閣議決定され、これを受けた所得税法等の改正法が2026年3月31日に公布されています。法律の整備自体は、すでに終わっています。
一方で、その税率がいつから使えるようになるかは、金商法の施行日に連動します。ここが「まだ決まっていない」部分です。
最大55%の総合課税から20.315%へ|課税所得の帯ごとに見た税率の変化

現行では、暗号資産の売買で得た利益は雑所得として扱われます。給与などほかの所得と合算し、金額が大きいほど税率が上がる総合課税です。所得税と住民税を合わせると、最も高い帯で55%程度に達します。
改正後は、譲渡所得として申告分離課税の対象になります。ほかの所得と切り離して、一律20%で計算します。復興特別所得税を含めると20.315%です。
自分がどれだけ変わるかは、ほかの所得と合算した課税所得がどの帯に入るかで決まります。
| 合算後の課税所得の帯 | 現行の税率(所得税+住民税) | 改正後 | 方向 |
|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 15% | 20% | 負担が増える可能性 |
| 195万円超〜330万円以下 | 20% | 20% | ほぼ変わらない |
| 330万円超〜695万円以下 | 30% | 20% | 負担が減る |
| 695万円超〜900万円以下 | 33% | 20% | 負担が減る |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 43% | 20% | 負担が減る |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 50% | 20% | 大きく減る |
| 4,000万円超 | 55% | 20% | 大きく減る |
※いずれも復興特別所得税を含まない概算です。復興特別所得税を含めると、改正後は20.315%になります。実際の税額は各種控除によって変わります。
見落とされがちですが、課税所得が少ない人は負担が増える可能性があります。「税金が下がる改正」と一括りに語られがちですが、全員が下がるわけではありません。
利益1,000万円を例にすると、合算後の課税所得が900万円超〜1,800万円以下の帯に収まる場合、現行では利益部分に43%がかかり約430万円です。改正後は20%で約200万円になります。差はおよそ230万円です。利益の全額が同じ帯に収まる前提の概算ですが、規模感はつかめます。
3年間の損失繰越控除が新設|年をまたいで損益を通算できる

税率と並んで大きいのが、損失の扱いです。
現行では、暗号資産の損失を翌年以降に持ち越すことができません。ある年に大きく損をして、翌年に取り戻しても、損失分を差し引けない仕組みです。
改正後は、分離課税の対象となる暗号資産取引で生じた損失について、3年間の繰越控除が認められます。繰り越せる年数は株式と同じです。
ただし、通算できる相手は限られます。暗号資産の損失を上場株式の利益と相殺したり、給与所得から差し引いたりはできません。暗号資産の分離課税は、株式とは別のグループとして扱われます。
相場が大きく上下する資産では、この違いは税率の変更に劣らず効いてきます。あわせて、暗号資産取引業者が取引の報告書を税務当局へ提出する義務も整備されます。取引の把握が進む方向です。
適用開始年はまだ確定していない|金商法の施行日に連動する仕組み

ここが最も誤解されている点です。
税制改正の大綱は、適用の開始時期をこう定めています。改正金商法の施行の日の属する年の、翌年1月1日以後の譲渡から適用する、というものです。
施行日を定める政令がまだ出ていないため、逆算すると次のようになります。
- 施行が2027年中であれば、適用は2028年1月1日から
- 施行が2026年中であれば、適用は2027年1月1日から
施行日は公布から1年以内と定められているため、2028年1月開始となる可能性が高い流れではあります。ただし、これは政令が出るまで確定しません。
「2028年1月から税率20%」と断定している解説を見かけますが、公式に決まった日付ではない点は押さえておきたいところです。
仮想通貨の減税は誰が対象?金商法改正で決まる「取扱銘柄×国内取引業者経由」の判定
税率が下がると聞いて、自分の取引がすべて対象になると考えるのは早計です。対象になるには条件があります。
対象は「暗号資産取引業者が取り扱う暗号資産を、同業者に譲渡した場合」

税制改正の大綱は、分離課税の対象をこう定めています。居住者が、暗号資産取引業者が取り扱う暗号資産を、暗号資産取引業者に対して譲渡した場合、その譲渡所得を分離課税とする、というものです。
ここには2つの条件が含まれています。
- 銘柄の条件:国内の暗号資産取引業者が取り扱っている暗号資産であること
- 経路の条件:その暗号資産取引業者に対して譲渡すること
つまり「どの銘柄か」と「どこで売るか」の両方が問われます。片方だけでは足りません。
税制の解説では、この条件を満たす暗号資産を「特定暗号資産」と呼ぶことがあります。国内の暗号資産取引業者が登録簿に登録して取り扱う銘柄を指す用語です。
金商法の情報公表の規制で使われる「特定暗号資産」(発行者がいる暗号資産)とは範囲が違います。同じ言葉でも文脈によって指すものが変わる点は、押さえておきたいところです。
暗号資産を投資対象とするETFや、暗号資産を原資産とするデリバティブ取引についても、分離課税の対象とする方針が示されています。ただしETFについては、別途、投資信託法の施行令を改正する必要があります。
海外取引所・DEX経由の取引は対象外となる可能性
大綱の文言をそのまま読むと、次のような取引は分離課税の対象から外れる可能性があります。
| 取引のかたち | 分離課税の対象になるか |
|---|---|
| 国内の登録業者で、その業者が扱う銘柄を売却 | 対象になる見込み |
| 海外の無登録取引所での売却 | 対象外となる可能性 |
| 分散型取引所(DEX)での交換 | 対象外となる可能性 |
| 国内業者が取り扱っていない銘柄の売却 | 対象外となる可能性 |
海外取引所だけを使っている人や、国内で扱いのない銘柄を多く持っている人は、改正後も総合課税のままになる可能性があります。「税率が20%になる」というニュースを見て安心する前に、自分の取引がどちらに当たるかを確認しておきたいところです。
この整理は税制改正の大綱の文言から読み取ったものです。個別の取引がどう扱われるかは、今後示される国税庁の解釈によって固まります。判断に迷う場合は税理士に相談するのが確実です。
ステーキング報酬・レンディング利息・NFTの扱いは今後の解釈を待つ段階
判断が難しいのが、売買以外で得た暗号資産です。
大綱が定めているのは「譲渡」した場合の扱いです。ステーキングで受け取った報酬や、レンディングで得た利息そのものは「譲渡」にあたらないため、分離課税の対象からは外れるという読み方が有力です。この場合、受け取った時点での課税は総合課税のまま残ります。
ただし、どの所得区分になるか、受け取った時点でいくらと評価するかといった細部は、大綱の文言だけでは決まりません。この部分は今後の国税庁の解釈を待つことになります。
NFTについても、金融審議会の報告書は、一律に金融の法制度の対象とすることには慎重な検討が必要だという整理を示しています。今回の改正で金商法の対象になる暗号資産の範囲は、現行法上の暗号資産と同じ範囲とされています。
これらは今後の政令・内閣府令や、国税庁の解釈で固まっていく部分です。現時点で断定的に説明している情報には注意したいところです。
仮想通貨の取引ルールはどう変わる?インサイダー規制と情報開示の新設
税金以外にも、日々の取引に関わる変更があります。特にインサイダー取引規制は、個人にも直接関わってきます。
インサイダー取引規制の新設|5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金
現行の金商法でも、暗号資産については相場操縦などの禁止規定が整備されています。一方で、インサイダー取引を直接取り締まる規定はありませんでした。今回の改正で、これが新しく設けられます。
規制の対象になるのは、国内の暗号資産取引業者が取り扱う暗号資産です。
公表前に知ってはいけない「重要事実」は、3つの類型に分かれます。
| 重要事実の類型 | 内容の例 |
|---|---|
| 発行者に関する重要事実 | 発行者の解散など |
| 暗号資産取引業者に関する重要事実 | 銘柄の取扱開始・取扱中止など |
| 大量に売買する者に関する重要事実 | 大口の売買の決定など |
3つ目の「大量」の基準は、発行済みの暗号資産の20%以上の売買などを政令で定める方向が示されています。加えて、これらに当てはまらない重要な事実を拾うための包括的な規定も置かれます。
違反した場合の罰則は、上場している有価証券と同じ水準です。5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が科されます。証券取引等監視委員会による調査や課徴金の対象にも加わります。
個人が「うっかり違反する側」になり得るケース
インサイダー規制というと、取引所の内部の人だけの話に聞こえるかもしれません。実際には、範囲はもう少し広く取られています。
規制の対象になるのは、発行者の関係者、暗号資産取引業者の関係者、大量の売買を行う者の関係者です。そして、これらの人から情報を受け取った人も含まれます。
さらに、公表前の重要事実を他人に伝えることや、取引を勧めることも禁止されます。利益を得させる目的、または損失の発生を回避させる目的があった場合が対象です。
たとえば、上場の話を関係者から聞いて、それを公表前にSNSへ書き込む行為は、この規定に触れる可能性が出てきます。これまでは規制の対象外だった行動が、施行後は違反になり得ます。
発行者の情報開示義務|募集時の公表と年1回の定期情報
投資する側にとって、材料が増える変更もあります。
特定暗号資産の発行者は、募集や売出しを行う前に、その暗号資産の情報を公表しなければならなくなります。暗号資産取引業者は、発行者が公表した情報を投資家へ提供します。
公表は一度きりではありません。重要な出来事が起きたときの臨時の情報を出す義務が課されます。発行者が募集や売出しを行った場合には、年1回の定期的な情報も公表します。
一方で、対象外となる場合もあります。少人数やプロの投資家を相手にした勧誘、無償での配布、マイニングの報酬としての付与などは、規制の対象から外れます。
無登録業者は拘禁刑10年へ|売買契約が原則として無効に
無登録の業者への対応も強められます。
罰則は、現行の拘禁刑3年以下から10年以下へ、罰金は300万円以下から1,000万円以下へ引き上げられます。証券取引等監視委員会の調査の対象にも加わり、裁判所による緊急の差止命令も使えるようになります。
利用者にとって大きいのは、民事上の効果です。金商法に違反する無登録業者による売付けは、原則として無効という扱いになります。無効ではないと主張する側が立証する形に変わります。
ただし、この扱いには範囲の限定があります。対象となるのは、暗号資産取引業者が取り扱っていない暗号資産です。国内の登録業者でも扱われている銘柄を無登録業者から買った場合は、この規定では救済されません。海外取引所でビットコインなどを買うケースの多くは、対象から外れることになります。
このほか、詐欺的な勧誘に暗号資産が使われることを防ぐ措置も検討されています。口座を開設した直後は、自分で管理するウォレットへ移せない期間を設ける、といった案が示されています。
仮想通貨の金商法改正で注意したい点|投資者保護基金・責任準備金・取得価格
制度が整うと、安心感が増します。ただ、制度が何を守り、何を守らないのかは分けて理解しておきたいところです。
「金商法の対象になったから安全」とは限らない|投資者保護基金の対象ではない
株式や投資信託の世界には、証券会社が破綻したときに顧客の資産を一定額まで補償する投資者保護基金という仕組みがあります。1人あたり1,000万円までが補償されます。
暗号資産が金商法の対象になっても、この投資者保護基金の対象になるわけではありません。今回の改正法にも、暗号資産を投資者保護基金の対象に加える規定は見当たりません。
「金融庁が規制する商品になったから、元本が守られる」という理解は、実際の制度とずれています。金商法が整えるのは、情報開示や不公正な取引の禁止といった、取引の公正さを保つ仕組みです。値下がりによる損失を穴埋めするものではありません。
確認しておきたいのは、自分が使っている業者が金融庁の登録を受けているかどうかです。登録業者の一覧は金融庁のサイトで公開されています。
責任準備金と分別管理でカバーされる範囲
一方で、利用者の資産を守る仕組みは強化されます。
暗号資産の不正な流出に備えて、顧客への補償の原資となる責任準備金の積立が義務づけられます。財務の健全性を測るために、自己資本規制比率の算出も求められます。
顧客の資産を自社の資産と分けて管理する規制や、原則としてインターネットから切り離した状態で保管する規制は、金商法へ移ったあとも維持されます。加えて、委託先を含めた安全管理の措置を講じる義務が、法律上の義務として新たに定められます。
業務を廃止する際に顧客への返還に支障が出る場合、管理人を選任する制度も設けられます。
これらは、破綻や流出が起きたときの備えを厚くするものです。損失が出ないことを保証する仕組みではない、という区別は保っておきたいところです。
施行前から保有している含み益の扱いは通達待ち
あまり語られていない論点があります。
分離課税が始まるのは、施行日の翌年の1月1日以後の譲渡からです。では、それ以前から持ち続けている暗号資産の含み益は、どう計算されるのでしょうか。
購入したときの価格をそのまま引き継ぐのか、制度が切り替わる時点の価格を取得価格とみなすのか。現時点で確認できる範囲では、切り替え時に価格を洗い替える経過措置は置かれていません。購入したときの取得価格をそのまま引き継ぐ、という読み方になります。
つまり、施行前からの含み益も、分離課税が始まったあとに売れば、その全額が分離課税の計算に入ります。長く保有している人ほど、購入時の記録が重要になります。取得価格を証明できる資料は、いまのうちから残しておきたいところです。
税制の変更を待つ場合に残るもの
税率が下がる可能性があるなら、それまで売却を待つべきか。そう考える人もいるかもしれません。
判断の材料になる事実を並べておきます。
- 適用開始の時期は、政令が出るまで確定しません
- 待っている間も価格は変動します。税率の差より値動きの幅が大きくなることもあります
- 自分の取引が分離課税の対象になるかは、銘柄と経路の条件によります
- 損失が出ている場合、繰越控除が使えるのは分離課税が始まってからです
どれを重く見るかは、保有している銘柄や金額、ほかの所得の状況によって変わります。税額の試算や個別の判断は、税理士など専門家に相談するのが確実です。この記事は特定の行動を勧めるものではありません。
発信者・事業者が押さえる金商法改正の実務|ステマ規制と登録の移行
個人投資家以外にも、影響が及ぶ範囲があります。特に情報発信をしている人は、自分が対象になり得ます。
ステルスマーケティング規制の対象に|対価を受けた意見表明には表示義務
改正法は、暗号資産に関する意見の表明について新しい規定を置きます。
対価を受け取ったうえで取引の判断に関する意見を表明する場合、対価を受けている旨を表示する義務が課されます。
これは、報酬を受けてSNSやブログで銘柄について発信している人に関わります。アフィリエイトで収益を得ている記事も同様です。「案件であることを書かない」という運用は、施行後は法律違反になり得ます。
暗号資産の仲介業が金融商品仲介業の対象へ
暗号資産の取引を仲介する業務は、金融商品仲介業の対象に加わります。
金融審議会の報告書は、必要な経過措置を設けたうえで、外務員制度など金融商品仲介業に適用される規制を原則として適用するのが適当だと整理しています。
取引所そのものにも規制が及びます。暗号資産取引業には、第一種金融商品取引業に相当する規制が適用されます。すでに第一種金融商品取引業の登録を受けている事業者が暗号資産を扱う場合は、変更の登録が必要です。
ステーキング業・貸暗号資産業も規制の対象に
サービスの幅も規制の対象に入ります。
暗号資産を投資の対象とする運用や助言は、それぞれ投資運用業、投資助言業の対象になります。利用者から暗号資産を借り入れる業務も、規制の対象に加えられます。
このほか、取り扱う銘柄の審査体制や、顧客に合った商品を提供するための確認体制、売買の審査体制を整えることが求められます。暗号資産の管理に関わる重要なシステムを提供する事業者にも、事前の届出と安全性を確保する義務が課されます。
仮想通貨の金商法改正に関するよくある質問
Q. 結局、いつから税金が20%になりますか?
まだ確定していません。適用は「改正金商法の施行の日の属する年の翌年1月1日以後」の譲渡からと定められており、その施行日を決める政令が公表されていないためです。施行は公布から1年以内と定められているため、2028年1月開始となる流れではありますが、公式に決まった日付ではありません。
Q. 海外取引所を使っていますが、減税の対象になりますか?
対象外となる可能性があります。分離課税の対象は「暗号資産取引業者が取り扱う暗号資産を、暗号資産取引業者に対して譲渡した場合」と定められています。国内で登録を受けていない海外取引所での売却は、この条件から外れる読み方になります。最終的な取り扱いは国税庁の解釈で固まるため、心配な場合は税理士への相談が確実です。
Q. 暗号資産のETFはいつ買えるようになりますか?
時期は決まっていません。今回の改正法そのものに、ETFを解禁する規定は含まれていません。暗号資産を投資対象とする投資信託を組成するには、投資信託法の施行令を改正する必要があります。金融庁が令和8年度の税制改正についてまとめた資料には、政令の改正によって組成できるようにする方針が示されていますが、改正はまだ行われていません。
Q. レバレッジ倍率は変わりますか?
今回の改正法には、レバレッジ倍率を変更する規定は見当たりません。個人向けの証拠金倍率は内閣府令や自主規制の水準で定められているため、施行にあわせた内閣府令の整備で見直される可能性はあります。現時点では未確認です。
Q. ステーブルコインも金商法の対象になりますか?
なりません。法定通貨と連動するステーブルコインは、資金決済法の電子決済手段として規制される枠組みが維持されます。金融審議会の報告書も、広く送金や決済の手段として使われる一方、投資の対象として売買されることは現時点で想定しにくい、と整理しています。金商法へ移るのは暗号資産の部分です。
Q. いま持っている暗号資産について、何か手続きは必要ですか?
保有しているだけで必要になる手続きは、現時点では示されていません。ただし、業者の名称が暗号資産取引業者へ変わることや、取引の報告書が税務当局へ提出される仕組みが整うことは決まっています。取引の記録を残しておくと、制度が切り替わったあとの申告で困りにくくなります。
まとめ|確定していることと、これから決まること
仮想通貨の金商法改正について、現在地を3点で整理します。
確定していること:改正法は2026年7月15日に成立し、7月23日に公布されました。暗号資産は資金決済法から金商法へ移り、有価証券とは別の枠組みの金融商品として扱われます。インサイダー取引規制と発行者の情報開示義務が新設され、無登録業者への罰則も強化されます。
まだ決まっていないこと:暗号資産部分の施行日は政令待ちで、公布から1年以内という範囲だけが決まっています。税率20%の適用開始年もこれに連動するため未確定です。施行前から保有する分の取得価格の扱いも、今後の通達を待つ段階です。
確認しておきたいこと:分離課税の対象になるには、国内の暗号資産取引業者が扱う銘柄を、その業者に対して譲渡することが条件になります。海外取引所やDEXだけを使っている場合、減税の対象から外れる可能性があります。自分の取引がどちらに当たるかは、早めに確認しておくと安心です。
今後は政令と内閣府令が順次公表されます。金融庁の発表を確認しながら、最新の内容を追っていくことをおすすめします。
参考にした一次情報
- 金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」説明資料・要綱(2026年4月)
- 金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」報告(2025年12月10日)
- 金融庁「令和8年度税制改正について」(2025年12月)
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(2025年12月26日閣議決定)
- 参議院・衆議院 議案情報(第221回国会 閣法第57号)
