大阪府は2026年8月26日、大阪市と共同で実施する「大阪府先駆的金融市場等形成支援事業補助金」の対象として、4事業への交付を決定した。応募12件から選定され、交付決定額は総額2,889万円となる。採択された4事業のうち3事業が、円建てステーブルコインのJPYCや米ドル建てのUSDCを使った決済を扱う。
交付対象となったのは、ハッシュポート(HashPort)、マイナウォレット、ミアット(Mi&T)、SBI XDC Network APACの4社。補助額はハッシュポートとSBI XDC Network APACが各1,000万円、マイナウォレットが764万円、ミアットが125万円となった。制度上の補助上限は1事業当たり1,000万円で、補助率は対象経費の2分の1以内。実証事業は2027年3月31日までに実施される。
ハッシュポートは、JPYCやUSDCなどを使う決済・清算基盤を大阪府内で検証する。小売店やレストランでは利用者からステーブルコインで支払いを受け付ける一方、加盟店には日本円で清算する仕組みを試す。ECサイトなどでは、第三者が代金を一時的に預かり、条件の履行を確認した後に売り手へ資金を移すエスクロー型決済にも対応する。実施時期は2027年1月から3月の間で、1週間以上を想定している。
マイナウォレットは三井住友カードと共同で、同社のオールインワン決済端末「ステラターミナル(stera terminal)」を使ったステーブルコイン決済を実証する。マイナンバーカードをデジタル資産ウォレットとして活用する「マイナウォレット」を通じ、JPYCによる円建て決済と、訪日外国人の利用を想定したUSDCによる米ドル建て決済を試す。実施場所は大阪府内のイベント施設または商業施設で、候補先と調整している。
大阪公立大学発ベンチャーのミアットは、同大学の周辺商圏にある飲食店や小売店約5店舗で、JPYCによる実店舗決済を検証する。利用者への還元や店舗業務の効率化を含め、利用者が使いやすく、店舗側の負担が少ない決済環境の構築を目指す。実施期間は2026年11月中旬から2027年3月中旬となる。
残る1事業は、SBI XDC Network APACによる貿易金融の実証となる。TOPPAN(トッパン)を共同事業者、Ginco(ギンコ)を協力事業者とし、法人デジタル証明書vLEIを使う法人確認(KYB)と輸出ファクタリングをブロックチェーン上でつなぐ。大阪府内の中古自動車部品輸出業者を事例に、取引先確認から資金化、代金回収までの一連の手続きの効率化を検証する。
今回の採択では、店頭、既存の決済端末、ECサイト、大学周辺の地域店舗と、異なる利用場面でステーブルコイン決済が試される。特に、利用者はステーブルコインで支払い、加盟店は日本円で受け取る仕組みが実用化できれば、店舗側がステーブルコインを直接管理する負担を抑えながら、決済手段を広げられる可能性がある。
一方、今回決まったのは実証事業への補助であり、各サービスの一般提供や恒久導入が決定したわけではない。実施店舗の詳細、取引件数、手数料、為替処理、実証後の展開条件も今後の確認事項となる。大阪府内の実店舗や商業施設でどの程度利用され、決済から日本円清算までを安定して運用できるかが、ステーブルコインを日常決済へ広げる上での焦点となる。
