暗号資産取引所バイナンスは2026年11月3日、10月29日の資産流出事件の初期調査結果を公表し、エンジニアに対する偽の就職面接が侵入経路になったと説明した。影響を受けた暗号資産は約63億4,000万ドルで、約1兆円に相当する。
バイナンスは、6月にウォレット運用を担当する別の技術者がAI開発ツールを探す際、改ざんされたホームブリューを取得したと説明している。同社は異常を検知して端末を交換し、認証情報を更新したものの、その担当者の役割や同僚の情報は攻撃者に知られたとしている。
9月、同社のエンジニアは正規の求人サイトを通じて接触を受け、人事担当者や架空企業の最高経営責任者を装う人物との面接に進んだ。業務用端末にダウンロードした選考課題には悪意あるコードが含まれていたとしている。
10月20日には、侵害された端末と社内AIツールが悪用され、ほかの担当者へのアクセスが拡大したという。10月29日には、盗まれた認証情報を使った不正処理が実行されたとしている。
バイナンスは、内部で送金を承認するウォレット署名サービスへの不正アクセスに加え、イーサリアムの「EIP-7702」で委ねられた操作権限も悪用されたと説明している。ブロックチェーン上の権限は通常の出金システムから独立しているため、出金停止に加え、権限を取り消す処理が必要になった。
同社は、ホットウォレットが秘密鍵を一か所に置かないMPC方式だったため、専用の権限失効手順が必要だったと説明している。10月30日0時10分(UTC、協定世界時)に不正な委任を解除したとしている。
11月3日の公表時点で、同社が凍結、または移動を阻止した資産は約28億5,000万ドルに上る。10月31日時点で影響を受けたトークン資産の98%を補充したとし、この数字は盗難資産の回収率ではなく補充率を示す。同社は損失を利用者に転嫁せず、自社で負担する方針を示した。
米連邦捜査局(FBI)は10月31日、今回の窃取について北朝鮮に責任があると判断した。バイナンスは、影響を受けたウォレットシステムと社内AIツール、アクセス制御を作り直したと説明している。調査と独立した検証は続いている。

